魔物封じの祠

葉舟

第1話

 いいわけなんて、無能のすること。


 神童と呼ばれ、調子に乗っていた僕は、自らにできないことはないと思っていた。


「いくらお前が優秀でも、封じられた魔物を退治することはできない」


 そんな言葉に反発して、僕は一人魔物封じの祠を訪れた。


 百歩も進めば行き止まりにあたる様な、小さな洞窟の奥に物々しく置かれた壺が一つ、古びた木製の台の上に置かれていた。


 壺の封印を解く前に、逃げられたら困るので、洞窟から出られない様に結界を張った。


 後は封じの蓋をとればいいかと、結界を確認していたら、木の台に当たった。


 地味に痛いと思うと同時に破壊音がして、壺が地面に落ちたていた。


 封印を解くつもりで来たが、壊すつもりはなかった。


 ちょっとヤバいかなと、思っている間に、なんか出てきた。

 頭に角が二本ある、緑の肌の巨漢。


「我が封印を解きし者よ、其方の願いを叶えよう」


 どうやらいきなり襲ってくる系統の魔物ではない様だ。


「では、封印壺の直して下さい」


 これで壊した事は誤魔化せるな。


「イヤだ」

「はっ?」


「我は自由だ。壺の中は狭くて孤独だから、絶対にイヤだ!」

「あー、壺の中には戻らなくていいから、壺だけ直して」

「イヤだ。我は騙されないぞー」


「お前、願い事叶えるつもりないだろ?」

「願い事を叶えるつもりはあるぞ。願い事を三つ叶えないと完全に封印が解けないからな」


 これ、もしかしたら完全に封印を解くのが難しいパターンか。


 どうするか悩んでいると、結界に干渉された。誰か、洞窟に入って来た。


 怒られるはイヤだ。


 僕はとっさに二つの魔術を使った。


「封じの祠には入るなと言ったはずだが?」

「犬が迷い込んだから捕まえに」

「壺を壊したのもその犬のせいか?」


 冷ややかな父の視線を受け、犬に転じさせた魔物を抱いて頷く。


「もう鎖もつけているのか。飼うのは認めよう。ちゃんと世話するように」


 下手ないいわけに、魔物がペットになった。

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魔物封じの祠 葉舟 @havune

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