「いいわけ」無用の異世界バトル!

Syu.n.

異世界の夜は危険です

ここは魔物の巣くう異世界。


「夜は何かと危険」と言うのは、この世界との共通認識だと思う。

だがこの人物は、腕によほどの自信があるのか、「深夜の散歩へ」としゃれこんだ。

そこで何が起こるのか、知る由もなく・・


「エモノ、イタ・・」


この人物の目の前に現れたのは、体長にして2mを越える魔物。「筋肉」隆々の如何にも強そうな魔物であった。


「・・さて、獲物はどちらかな?」


自身の倍はありそうな巨漢の魔物にも、その人物は動じる気配はない。

懐から一冊の本を取り出す。

まさに今日の昼、「本屋」で購入した書である。

その知識のない人には、ミミズののたくったような「ぐちゃぐちゃ」な文字で書かれた書。だがこの人物は、まさにその文字を朗読するかのように高々と詠唱する。


「ナニヲ・・?」


「来たれ、その者に不幸をもたらす7つの災いよ! 「アンラッキー7」!!」


呪文と呼ぶべき詠唱を終えた時、まさにそれが現れた。


1匹、いや、1個と言うべきだろうか、可愛らしいクマの「ぬいぐるみ」である。その大きさはおおよそ16㎝程で、地面に鎮座している。

もし、この様子を端から観る者がいたなら、いかにも仰々しい動作とその結果のギャップに唖然としてしまうかも知れない。


だが、その魔物にとっては違った。

明らかに今召喚されたもの、「クマのぬいぐるみ」に対し、おびえた様子を見せる。


「ナ、マサカ、アナタハ」


その時、そのクマのぬいぐるみは突然立ち上がり、流暢にしゃべりだした。


「やぁ。何事かと思えば君かぁ。何?先日渡した「特製プロテイン」の料金を支払える目途はついたの?」


「イエ、・・ソレハ、イマカラ」


「ナニ!?目途も付いていないのに、ボクの前に現れたわけ?いい度胸だね」


「イエ、ソレハ、コノモノガカッテニ」


「いいわけ無用!! 利子を倍にするからね!じゃあ、僕は忙しいから!!」


そう言い捨てると、クマのぬいぐるみは、召還を解いたのだろう姿を消した。


「・・・・・」


「・・・・・」


何とも言えない空気が、人物と魔物の間に流れる。


「・・あのさ、」


「・・・ナンダ?」


その人物は意を決して言った。


「・・・俺が言うのもなんだが、「クマのぬいぐるみが販売している特製プロテイン」は、イロイロ相当ヤバいらしいぞ?夜の追いはぎまがいのことなんか辞めて、本気で対策しといたほうが良いんじゃないか?」



その後、筋肉隆々の魔物が、深夜に出没することは無くなりましたとさ



教訓:うまい話には、いいわけ無用のヤバい事もある

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「いいわけ」無用の異世界バトル! Syu.n. @bunb3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ