言い訳、良い訳?

御影イズミ

今日も「いいわけ」が続く

「うあ~~~」


 エルグランデを統括する組織・セクレト機関の司令官であるエルドレット・アーベントロートは自分の机で身体を伸ばし、あくびをする。

 司令官という立場上、部下全員の調書や研究書類、果てには許可を与えたりなんだりと忙しく、一時も休まる時間がない。

 それも世界を守るため、と考えれば仕方がないことなのだが……。


 今ならちょっとぐらい休んでもいいだろう、なんて言い訳を呟きながら、腕を組んで顔を伏せて自分の身体を休眠させる。


「父上、寝ないでくださいね」

「うげっ、リヒ……」


 そこへ現れたのはエルドレットの実の息子にして、司令官補佐のエーリッヒ・アーベントロート――現在の名は、金宮燦斗。

 彼の手には司令官であるエルドレットに引き渡すためにあらゆる場所から集めた書類が束になっており、それを見た途端にエルドレットの顔がひきつる。


「な、なあ、リヒ。もう俺、24時間以上稼働しっぱなしなの。わかる?」

「ええ、わかります。私は36時間ですが」

「生身のお前と違って、俺は休まなきゃいけないの。わかる?」

「ええ、わかります。生身の私のほうが休まなければなりませんが」

「俺はかなり繊細な機械って、フェルゼンから聞いてるよね?」

「ええ、聞いてます。多少は長く扱っても大丈夫なことも」


 エルドレットが言い訳をすれば、正論で返してくる燦斗。

 自分だって休みたいんだという威圧を放つ燦斗に対して、エルドレットは言い訳を続けていた。

 親子らしい喧嘩だと言えば聞こえは良いが、トップとその補佐のやり取りなので微笑ましさなんて何処にもない。


 そんな口喧嘩の中で、最後のトドメを放ったのは燦斗の言葉。


「言い訳を続けて、世界が滅んでも良い訳ですか?」

「むぐぅっ!!」


 世界の守り手を称するエルドレットにとっては、精神的に来る言葉。

 その一言を最後に、エルドレットは追加で4時間ほどの稼働を強いられたのでした。

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