Unreasonable

まれ

間違い

 僕は間違った。

 仕方ないとはいえ、ああするべきではなかった。

 あれさえしていなければ、こんなことにはならなかった。



 僕はあの日、彼女と喧嘩した。

 原因はいろいろあるが、一番は自分のイライラしていたことだった。

 イライラしてたのは彼女の卒研はうまくいっているのに自分の卒研はうまくいってないという焦りから。

 そして、家を飛び出してしまった。

 その後、事件は起こった。



 公園で一休憩をするためにベンチに座っていた。

 すると、パトカーが公園の外に止まった。

 警察官が降りてきてこっちに来た。

星羅せいらさんですね。署までご同行願います」

 こうして、僕は警察に連れてかれた。

 地獄の日々が待ち受けていた。



 まず、警察署で取り調べを受けた。近くで起こった事件の犯人として連れてこられたらしい。その事件のことは全く知らないし、そう言っても警察官の人は信じてくれなかった。犯人のことだから嘘をつくと思われてるんだろう。

「弁護士を呼んでください。話はそれからです」

 そういうと、警察官はあっさり撤退してくれた。しかし、まだ終わってはいなかった。

 翌日、弁護士を名乗る男が僕のところへと訪ねてきた。

 事情を話すと「それは災難でしたね。できる限りを尽くします」と言って帰っていった。第一印象は正直、不安だった。

 翌日も取り調べを受け、弁護士と会い、そして檻で眠った。昨日と違ったのは弁護士が被疑者ノートをくれたこと。ここに取り調べの内容を書くことである程度強要されるのを抑えられるらしい。

 三日目になり、今日は拘置場に連れてこられた。完全に誤認逮捕である。冤罪だと主張しても聞く耳を持ってくれない。

 ここで十日間過ごした。

 ずっと、冤罪であることを主張し続けた。ただ、犯人ではない証拠がないためまだ容疑は晴れなかった。

 さらに十日延長された。

 彼女にもかなり心配されているだろう。失踪したと言われていそうだ。

 ここからさらに地獄が続いた。最近は暴力を振るわれ、脅迫される日々になった。さっさと自白したほうが罪も軽くなるし、気分も良くなると。何度も何度もそんなことを言う。「僕は何もしていないし、何もしてない。これは冤罪だ」とその度に言い、「それは罪から逃げるためのいいわけか?そんなことよりも吐いたほうがいいぞ」とその度に言われる。理不尽な日々の連続。そんな七日間が続いた。



 その翌日、連れてかれて実に三週間が経った。

 今日は少し取り調べが違った。何があったのか弁護士に訊いた。

「実は新しいことがわかったんだ。もしかすると、真犯人が見つかるかもしれない」

 少し希望が見えた気がした。



 二日後、真犯人が警察の手で捕まえられ、真犯人は取り調べで自白した。

 真犯人が捕まったことで僕は釈放されることが決まった。

 こんなあっさり釈放されるんだなと感じた。

 実に二十三日間の拘束である。家族や彼女、学校には連絡できなかった。スマホなど通信機の類が回収されていたためだ。

 一応警察署からの謝罪はあったがその後取り調べに来ていた刑事と会いこんなことを言われた。

「やってないならやってないって言えよ。手間かけさせやがって」

 いや、ずっと言ってたじゃん!なんてツッコミそうになった。なんて理不尽なんだろう。いいわけとして処理したのはそっちだろ。

 そういえば、謝罪と共に封筒を渡されていたことを思い出した。

 中も出してみるとお札が入っていた。五枚。一万円札が二枚と千円札が三枚。つまり二万三千円である。

「え?これだけ?」

 補償というやつなんだろうが少ない気がした。ほぼ、一か月の拘束である。一か月分の給料と意味はさして変わらないはずである。

 しかも、暴力まで振るわれて、脅しも受けて、耐え抜いたというのにこれである。

 絶望の地獄の日々はまだ終わってなかったようだ。

 



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Unreasonable まれ @mare9887

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