失った先に

もちこ先生

第1話

見慣れた景色

懐かしい故郷の匂い

あぁ、帰ってきたんだ

そう思うと同時に、どこか安心する

やっぱり、地元が一番だわ

俺は、地元の高校を卒業した後

関東の大学へ入学した。

2年くらい、帰っていなかったが

友人の健が、早く帰ってこいとうるさいから

夏休みを利用して、帰省してきたのだ

「まもなく、伝ヶ崎、伝ヶ崎」

聞き慣れた、車掌さんのアナウンス

見慣れた駅が見えてくると、そこには健がいた

「うわ、待ってたのかよ」

健の目の前に、俺が待つ電車の扉が停止する

扉が開いた瞬間

「おっかえりー!すぐる!!」

急に抱きつことしてくるから、俺は素早く身をかわした

「うわ!?」

「ったく、怪我するからそれやめろって言ってるだろ」

「わりーわりー」

「ったく」

「おかえり」

「ふっ、、ただいま」

キャリーバックを引きづりながら、俺は健と一緒に

実家へと向かった。

実家には、ばあちゃんしかいないけど

「実家に行く前に、墓参り行くか?」

「ばあちゃんと行くよ」

「ま、そうだな。わり」

「いいよ、ありがとう」

俺の両親は、俺が中学の頃に交通事故で亡くなった。

その後は、ばあちゃんが育ててくれたんだ

「ばあちゃん、元気かな」

「元気も何も、、、」

「ん?」

「コラーーーー健ーーーー」

「あ!?やっべーー」

「あんた、またうちの畑のトマト勝手に食べただろーー」

「俺じゃないって〜」

「他にーーー誰がいるんだーい」

「助けてーすぐる!!」

「すぐる?、、、すぐるかい!!」

「ただいま、ばあちゃん」

久しぶりに会う、ばあちゃん、よかった元気そうだ

「今帰ってきたのかい?」

「うん」

「そうかい、そうかい」

「墓参りには行ったのかい?」

「ううん、まだ。ばあちゃんと行こうと思って」

「そうだったのかい、じゃあ私も準備しないとね」

「じゃあ、俺はこの辺で」

「あんたは、後で覚えときな」

「ひ!?」

「あはは」

俺は、健と別れた後、ばあちゃんと実家に向かった。

変わらない実家の風景、変わらない実家の匂い

やっぱ、ここが一番落ち着くな

「さて、そろそろ行こうかね」

「うん」

実家から、両親が眠ってるお墓までは

歩いて5分くらいで着く

「父さん、、母さん」

ここにくると、死んだ両親を思い出すから

心が苦しくなる

「あれから、もう6年か」

「うん、あっという間だね」

「今日は何食べたい?」

「ばあちゃんの、ハンバーグ」

「わかったよ。」

「俺、ちょっと散歩してくる」

「気をつけてな」

「うん」

俺は、久しぶりに昔使ってた登校ルートを歩く事にした

ここの抜け道、まだ使えたんだ

歩けば歩くほど、ここでの思い出が蘇る

「墓参り終わったのか?」

「あぁ、いたのか健」

「いたのかってひどいな」

「あはは」

「んで、どうなのよ向こうは」

「全然都会だよ。こことは比べ物にならないくらいな」

「いいよなー都会は」

「お前も行けばよかったじゃん」

「俺は、実家継がないとだからな」

「まあ、そうか」

「なあ、久しぶりにあそこいってみっか」

「あそこ、まだ行けるのか?」

「あぁ、行けるぜ」

健が言っている、あそことは昔健と一緒に作った

秘密基地がある場所である

「ここから抜けてっと」

山道にある、人がギリギリ通れそうな道を抜けると

そこには、ボロボロだけど、秘密基地がまだそこにあった

「あの秘密基地まだあったんだな」

「あぁ」

「久しぶりに、中に入ってみる、、、ん?」

秘密基地をよく見ると、人影のような物が見えた気がした

「なあ、健。中に人いないか」

「え!?何怖いこと言ってんだよ。」

「ちょっと確かめてくる」

「お、、、おい!すぐる!!」

俺は恐る恐る、秘密基地の中を確認する

すると、その中には見たことがない、一人の少女がいた

倒れてるというより、眠っているようだ

「お、、おい、、大丈夫か」

「うぅ、、、、」

「こんなところで寝てたら風邪引くぞ」

「こ、、、ここは」

「ここは、俺の秘密基地の中だけど」

「あなたは、、、誰?」

「あぁ、ごめん。俺は、日江島すぐるだよ」

「君は?」

「わ、、、私は、、、」

「おい!?大丈夫かすぐる!?」

「きゃ!!」

健が大きな声を出すもんだから、その少女が驚いて

俺の手を握った。その時

「うわ!?」

一瞬目の前が真っ暗になった

気がついた時に見たのは

見慣れた景色ではあるけど

どこか違和感を感じた

「ここは、伝ヶ崎?」

「ここ、、どこ?」

俺の隣には、さっきの少女がいた。

「多分、俺の故郷だけど、、なんか」

「いや、なんでもない。歩けるかい」

「うん」

俺は少女を連れて、街の中を歩く事にした

「やっぱり、伝ヶ崎か、、、」

見慣れた雰囲気ではあるけど、なんか変な感じがする

「実家に行ってみるか」

俺は少女を連れて、実家に戻る事にした

「そういや、君の名前は?」

「わからない」

「え?」

「ごめんなさい、、私何も覚えてないの」

「記憶喪失ってやつか」

「たぶんそれ。難しいことわかんない」

「だよね。ごめんごめん」

「もうちょっとで着くから」

「うん」

実家が見えてくると、変わらない家がそこにあった

俺は、そこでやっと安心した

変な違和感はきっと気のせいだ

そう思えたから

だが、俺が見た景色はそれを一瞬で忘れさせる景色だった

「さあ!すぐる!!!今日はかくれんぼだ!!」

「わーい!!!今日はお父さんが鬼ね!!」

「おお!すぐ見つけるからなー」

そこには、子供の俺と父さんがいた

「ど、、、どうなってんだよこれ」

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