第3話 もっと私の部屋に来てよ!

 妹の理沙が「で良いから、私の部屋に来てよ」と言ってくれた。


関係が冷え込んだ兄妹仲が復活するかも…? なんて、喜んだ俺だが…。


の頻度がわからねー。

多すぎるとウザがられ、少なすぎると拗ねるだろうし…。


考えても埒が明かないので、俺は検索サイトで『たまにの頻度』を調べてみた。


…調べまくった結果、3割ぐらいが『たまに』になるらしい。知らなかったぜ。


という事は、3~4日に1回突撃すれば良いんだな。

多すぎず、少なすぎずの頻度だ。これなら理沙に怒られることはないだろう。



 頻度を知った俺は、3~4日に1回、ノックしてから理沙の部屋に突撃する。

ノックしたら突撃と言わないような…? それは気にしなくて良いか。


それを4回繰り返し、直近の土曜の昼。俺はリビングで1人、菓子パンとお菓子を食べているところだ。これはいつも通りだから、何も気にならない。


我が家は、土曜・日曜の昼食は自由になっている。時間はもちろん、食べる物もだ。日々家事で疲れる母さんを休ませるためだと、父さんは言っていた。


それに俺と理沙も賛成する。母さんが大変なのは、普段からわかっているからな。


外食をするのも良し、家にあるカップ麺やインスタントを食べるのも良し、事前に買い物担当の母さんに頼んで、すぐ食べれる菓子パンとかを買ってもらうのも良い。


料理を作る回数が減ったことで、母さんは以前より疲れを見せなくなった。

その変化は一目瞭然なので、我が家のルールとして定着したのだ…。



 そんな訳で、テーブルの椅子に座りながら携帯を観て、菓子パンとお菓子を併用して食べる俺。すると、足音がリビングに近付いてきて…。


「…兄さん。お昼なんだ?」

理沙がリビングに来た。


「ああ…」

珍しいな、時間が被ったことはほとんどないぞ。


あっても、彼女から声をかけたりはしない。心境が変わってる証拠かも…?


「お前は何を食べるんだ?」

せっかくだし、話を膨らませよう。


「冷凍パスタにするつもりだけど…」

そう言って、冷蔵庫に向かう理沙。


ガサガサ漁る音が聞こえた後、包装を破る音がする。

お目当ての冷凍パスタを見つけたのか…?


それから、電子レンジをいじる音が聞こえる。

冷凍パスタはうまいが、温めるのに時間がかかるのが難点だな。


パスタが温まる間、理沙はどうするんだろう? レンジ前で待機か?

そう思っていたが…。



 理沙はキッチンからリビングに移動し、俺の前に腰かける。

彼女と向かい合って座るなんて初めてだぞ。どういうつもりだ?


「兄さん。私が前言った通り、来てくれるよね」


「そういう話だからな」

文句を言われる頻度じゃないはずだが…?


「3日とか4日に1回じゃ物足りない! もっと私の部屋に来てよ!!」


「…え?」

そっち方面の要求? 意外過ぎて、開いた口が塞がらない。


「2日に1回か、1日に2~3回は来てほしいんだけど…」


要求が細かいな…。回数を増やして良いのは嬉しいが、まだ壁を感じる。


「それだったら、お前が俺の部屋に来ても良いぞ」

そうすれば、好きなタイミングで好きなだけ会えるし…。


「面倒だから嫌!」

俺にあれこれお願いするほうが面倒だろ…。


とはいえ、それを指摘したら絶対機嫌を損ねるよな。ここは受けるべきだ。


「わかったよ」


「ノックを忘れずにね!」

そう言い終わった後、理沙は再びキッチンに向かう。


おそらく、もう少しで冷凍パスタが温まるんだろう。


ちょうど菓子パンとお菓子を食べ終わったので、このまま待機して彼女とおしゃべりしても良いが、距離の詰めすぎも良くない。


物足りなければ、さっきみたいに理沙が何か言うはずだ。


俺は菓子パンとお菓子のごみを捨てた後、リビングを出る…。

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