魔術師見習いカティアたん、読み聞かせのバイトをする
来麦さよな
魔術師見習いカティアたん、読み聞かせのバイトをする
「ねー、ご本読んでー?」
「読んでー?」
きらきらとしたつぶらな瞳たちが魔術師見習いのカティアたんを見ている。
うえぇぇ……。とカティアたんの顔は引いているが、断ることはできない。ひょんなことから魔術書店の一角で読み聞かせのアルバイトをすることになってしまったのだ。
いつもの本屋とはいえ勝手が違うな、と彼女は居心地が悪いが、
「ええ、おほんっ。それでは楽しい物語のはじまりはじまり……」
魔術師見習いの読んだ本が語ることには――
◇ ◇ ◇
むかしむかしあるところに、かわいい女の子がいました。
女の子は、朝起きたらまず髪の毛のお手入れ。爆発してぐちゃぐちゃの髪を丁寧に
昼間はぬいぐるみと遊びます。
夜になったらおねんねです。けれど女の子は妖精さんに誘われて、こっそり野原の探検にでかけたりもします。
妖精さんは筋肉が大好きで、筋肉のすばらしさについて女の子に力説しますが、このときに限っては女の子の瞳は死んでいます。
すると妖精は目ざとく気づき、
「僕の話、おもしろくない?」
と聞いてきますので、
「ううん。今お耳が中耳炎だから聞こえにくいの」
といつもいいわけするのでした。
ときどきは深夜の散歩で起きた出来事をお父さんやお母さんに話して聞かせることもありました。両親は女の子は夢の話をしていると勘違いしていましたが。
あるとき女の子は、おもちゃの箱を運んでいました。けれど詰めこみすぎたのか、ちょっと重いのです。
重いなあ、でもあと七歩。
腕をぷるぷるさせながら、いちに、さん……。
するとアンラッキー7なことに――
どんがらがっちゃん。箱をひっくりかえして、さあ大変。たくさんのおもちゃが飛び出ていきます。
箱のフタが開いてしまったのでした。
そして、この話もお開きになってしまったのです。
女の子にもうちょっと筋肉があったなら、この話はもっと続いたかもしれませんね。
おしまい。
魔術師見習いカティアたん、読み聞かせのバイトをする 来麦さよな @soybreadrye
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