世界は土に覆われたそうですが、違う星から来たぼくには関係ありません
空っぽの無能
ぼくは土を掘りに来ました
この世界はその昔、緑と青に覆われた自然豊かな世界だったそうです。魔法なんていうテクノロジー?があったみたいで、土魔法とかなんとかそういうやつが暴走して、世界を土で覆ったそうなんです。
正直、関係ありません。ぼく、違う星から来たので。ただ、そう土を掘りに来ました。
ぼくの住む星には土が少ないです。変わりに海っていう青い大きな水溜まりがあります。数少ない土を奪い合って、いつも誰かが怪我しています。
ずっと前に父が大ケガを負って死にました。
そのつぎの年に母がケガで死にました。
そのつぎの日に祖父が殴り殺されました。
きのう祖母がバラバラになって死にました。
きっとそう遠くないうちにぼくの妹とぼくのどちらかが死にます。だからぼくは妹と船に乗ってこの星にたどり着きました。
ここには土しかありません。だから持ってきただけのごはんと水でしか生きられない。そんなに長くは居れません。だから少しでも長く生きるために、妹はコールドスリープに入りました。高い機械。母の形見です。
ぼくは少しでも争わなくなってもらうために、ここの土をできる限り、死ぬまで掘って、ぼくが死んだあと死骸と一緒に空間箱に入れて、妹に故郷の星に連れてってもらいます。
親戚の叔父さんが養子に入れようとしてくれてたのを知ってます。あの人は母に惚れてたけど父の親友でもあったことを知ってます。父が死んだあと母と同じくらい悲しんで、母が死んだときには祖父母と繋げてくれたのもあの人です。あの子は母親によく似ています。叔父の初恋の人の最期に残した形見です。だからぼくが死んでも叔父はきっと守ってくれます。妹は嫌がったけど、最後には納得してくれました。船のスイッチを押せばそのまま帰れるように変えました。
だからぼくは土を掘ります。死ぬまで、死んでもずっとずっとこの星を埋め尽くすこの土を掘ります。
どんどん深く掘ります。緑が見えても。海が見えても。ずっとずっと、ぼくが死ぬまで。
世界は土に覆われたそうですが、違う星から来たぼくには関係ありません 空っぽの無能 @honedachi
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