今日も休む言い訳を知りたい

石田空

今日も休む言い訳を知りたい

 いかに体育祭のときに休むか。

 服を重ね着しまくって風邪を引くとか、ちょっと様子のおかしい食べ物を食べて、食中毒で救急車に運ばれない程度にお腹を壊すとか。

 これが捻挫とか骨折とかだったら、体育祭自体には参加せずとも、炎天下の中エンドレスで座らされて、乾いた笑顔を貼り付け「みんな頑張れー」と応援しないといけない。

 世の中、運動が嫌いな人間に対して人権がなさ過ぎる。

 別に散歩は好きだし、歩くのは大好きだけれど、誰かと一緒に競争するのが好きじゃない。

 だって、したくもない競争させられて、負けるとものすっごく怒られるじゃない。運動が苦手だ、本当に駄目なんだと言っても、勝手に「またまた~」とか「やってみれば楽しいよ」とか言われて、全然話を聞いてくれないじゃないか。好きな人だけやって欲しい。


「ああ、そうだ。体育祭のとき、皆でお揃いのTシャツつくるから、応援合戦でそれ着ようよー」


 クラスの目立つグループの子が言うと、それは一斉に歓声が上がった。

 本当に勘弁して欲しい。

 あの子たちからしてみれば「高校生ブランドが使えるのは三年間だけなんだから、目いっぱい楽しんじゃおう」的な感覚なんだろうけれど、勝手に任されて、勝手に期待された挙句、期待に応えられなかったら途端に掌くるりんとされて責められるのが嫌だから、穏便に休もうとしているのに。

 Tシャツ代を徴収されるときの虚しさが凄まじい。

 行きたくない。ぜんっぜん行きたくない。


「今年もフォークダンスあるよねえ」

「うん……他は全然期待してないけれど、フォークダンスだけはしたい」


 クラスに好きな男子がいる子たちは、競技自体は全然乗り気じゃないけれど、フォークダンスで一緒に踊りたがっている。青春だ。青春オーラがすごい。

 私はそんな青春している人々の壁となってひっそりと生きるから、本当に休みたい。

 私は今日も、休む言い訳を探している。


<了>

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