佳子の世界の七大珍味

ろくろわ

世界の七大珍味

 キッチンに並べた世界の七大珍味を前に佳子よしこ昌士まさしは各々悩んでいた。とりわけ昌士の顔は蒼白い。そんな中、先に口を開いたのは佳子だった。

「調理するから奥に行って」

 昌士は静かに奥の部屋に移動した。


 さてまずはトリュフとフォアグラ、キャビアからだ。その後に不死鳥の舌・ラフレシアの花弁・冷凍マンモスの尻肉・八咫烏やたがらすの巣の調理だ。


 もちろん佳子はレシピ等見ない。

 だけど佳子には自信があった。佳子は幼稚園の時シェフだった母。佳夏よしかがこれで料理を作ってくれた記憶がある。

「さてと」と佳子は気合いを入れ調理では出ない音を出しながら作業に取りかかった。



 数時間後、昌士の前に料理が運ばれてきた。

 ゴルフボール程の大きさになったキャビア。

 ラフレシアのサラダは目を離した隙に花弁が増えていく。

 不死鳥の舌のボイルは頭まで再生していた。

 八咫烏の巣のスープからはトリュフが次々に生え始めている。

 調理中のキッチンから三人くらいの話し声が聞こえたが怖くて確認が出来ない。

 昌士は目の前で踊り出す料理から逃避していると佳子の声が聞こえた。

「次が最後の料理。冷凍マンモスのステーキにフォアグラを乗せて。自信作だよ!」


 昌士は覚悟を決めるしかなかった。


 そんな状況が一変したのは佳子が七大珍味料理を机に並べた時だった。突如とつじょ料理が光に包まれると神々しい声が響いた。

「願いを一つ言え」


 昌士はこんな状況に疑いもしなくなっていた。

 佳子の方を向くと「料理が上手くなりたいと願え」と懇願こんがんした。


 佳子は暫く悩み願いを伝えた。

 一瞬部屋が光ると机の料理は消え、からになったお皿だけが残された。






 昌士はお皿を洗いながら佳子に尋ねた。どうして願い事はと言ったのか。

 佳子は少し照れ

「願いで料理が美味しくなっても私の料理じゃないから。昌士には私の料理を食べてもらいたいの」

 と願いが訳を話した。



 顔を赤める佳子は可愛い。

 そう昌士は思った。



 了



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佳子の世界の七大珍味 ろくろわ @sakiyomiroku

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