第28話 納言薄幸は幸多けれど

家庭教師とお笑い第七世代の女

「はるは、あけぼの」これは春の夜明け

「ふゆは、つとめて」これは冬の早朝を表す表現。

俺達が学生だった頃は【曙=あけぼの】と言う力士が現役だったので

「はるは、曙」「なつは、白鵬/朝青龍」みたいにふざけたが

上記三力士のこと等知らない若者も居るかも知れない。

 若者は過去をインストールする権限を持ち

 我々は未来を体験する機会を一秒ずつ失っている。

この情報格差の恐ろしいことよ。

紙一重で我々は文明の外側で朽ちるかも知れない。

 今、教えている生徒が通う学校で先生が何十年も前のゲームの話をしたら

十代の男子生徒が

「先生、それ、ナツい。2D、2Dゲームじゃん!」

 と、言ったそうだ。3Dに対して2Dと言う表現は理解出来るが

20歳にも到達していない人間が知り得る情報?

 恐らく、俺達が十代だった頃はそんな未来人がおこなうような

会話は成立し得なかった。あくまでも先生(=大人)の描く情報は

年齢の隔たりがあるだけヴェールに包まれる問題だった。


 一緒に枕草子を勉強した生徒の知識には、お笑い第七世代の納言幸が居る。

清少納言に対して、納言幸だ。この因果をどう捉えよう?

納言幸なんて俺達が学生時代には当然居なかったし

なんなら彼女の薄幸【すすき みゆき】と言う芸名は

BIG3のビートたけしが命名した。

 ビートたけしが何をする人か知らない若者もきっと多いだろう。

お笑い、司会、映画監督、役者、ピアノ演奏、タップダンス、絵画……

マルチタレントの域を超えた活躍ぶりである。

かつがつ俺は、彼の全ての顔を知っている。

彼の才能を開花させる発表媒体も減少傾向にある。

「最近、あの人、TVで観掛けないねえ」

 は、我が家ではNGワード。俺達自体がTVを観てないから。

 売れている人は年間150番組に出演すると言う。

信頼出来る数字だと思う。たまたま点けたタイミングで

たまたま映っている人々は年間150本の可能性あり。

「ふゆは、あけぼの」早く四季感覚のずれを生肌で感じたい!

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