第26話 競馬女子はシンデレラ

ダートコースの革命児、砂遊びの申し子

「スペちゃん?」

「ほらあ、一期の、主人公の……」

「ええと、一期って何だっけ?」

「噛み合わないねえ、スペシャルウィーク知らないの?」

「あっ、あっ、ああ……ああ……」

多分、伝わっただろうけどこのタイムラグは致命的だ。

「正直、スペちゃんは余り走らせたことがないよ」

走らせる、つまりスペちゃんはアスリートなのである。

「この際【走る/走らない】は、どうでもいいや。

大切なのは、五段重ねの重箱を一人で食べようとしたことさ」

「ちょ、食欲で引き合いに出すのはオグリキャップじゃない?」

「否、現に君は知らなかった、スペちゃんの食欲を」

「そう言う設定って、モデルになった馬がそうってこと?」

「オグリに関してはそうかも知れない。いや、そうなんだよ。

でもスペちゃんの食欲は盛ったのかもな。うん、多分そうだ」


【モデルになった馬】と言う文言が出たように

これは競走馬にまつわる、もっと情報を限定すれば

シンデレラダービーに関する話題である。

 聞き手の宇治川悶は、スペちゃんと言う愛称に覚えがなかったのだから

派生するコミックスやアニメーションの知識は薄いのかも知れない。

 話し手の水川聖子は、少なくとも(宇治川)モンちゃんよりは

シンデレラダービーに関しての知識があることになる。

 二人の会話は与太話で終わる可能性もあるし

重要な伏線に成り得る可能性も秘める。

(宇治川)モンちゃんにとって今、この瞬間が

スマートフォン・ゲーム黎明期なのだから。

 導入、入り口は少年英雄団だった。

クラスメイトがこぞって並走してくれた。

 シンデレラダービーも人気のゲームだった。

(宇治川)モンちゃんはスマートファルコンを溺愛した。

ダートコースの革命児、砂遊びの申し子。

※レースは芝か、ダート(=砂場)でおこなわれる。

ログインボーナスを待ちながら、ホット珈琲の湯気を眺めた。

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