第09話 06月双児07月巨蟹

『06月』双児宮 両子蒼生【男性】「フタゴ ソウセイ」

【イレブン・セブンは奇跡の名器 俺の楽器は踵と爪先】

ダブル・タップ・ダンスは、弟の生示とおこなうことにした。

 一糸乱れぬ踵音、爪先音。芸術的な響きに気持ちが盛り上がる。

 生示にはイレブン・セブンの開発にも関わらせた。

 大きな対立も予感したが、ことごとく合致して成功へ。


 完成したイレブン・セブンはMugen巡海に見初められ

商標登録まで漕ぎ着けた。彼女のブランドがあれば、

きっと売れる商品に昇華することだろう。


 一卵性双生児と言う関係性はそこまで珍しくも無いが

生示と歩んで来た二人三脚は奇跡の連続だった。

 俺は野球部で弟は陸上部だったが、

県大会で足部を痛めた俺に代わって、生示は代走に着任。

兄貴顔負けの走塁で、TEAMを優勝へと導いた。

 高校時は流行した麻雀には眼もくれず軽音楽部に入部。

 お互いにドラムスを安住の地に選び

同じBANDを組むことは無かったが

BAND SCOREを貸与し合って、技術研鑚に切磋琢磨した。


 TAP DANCEは兄弟揃って素人だったが、

好きそうなRHYTHM PATTERNは予想が着くので

W TAP DANCEと銘打っても遜色の無い完成度を

刻めていると自負する。


『07月』巨蟹宮 蟹江福井【男性】「カニエ フクイ」

【故郷は福井とアトランタ 偽名から成る経歴詐称】

 昔から、言葉遊びは得意な方だった。

文系を選択して、リズム感の良い文章を好んで書いた。

歌うことよりも裏方に徹したかったが

歌唱表現者の途も模索しながらMICを握る。


 福井県には、行ったことが無い。加えるなら

ジョージア州アトランタにも。Mugen巡海が生まれた土地で育ち

黒人文化とは無縁の少年時代を過ごした。


 巡海は俺にRAPの歌唱を強く求めた。

なんなら彼女も、爪弾きながらRAP歌唱したいと言う。

意識意欲共に高いねえちゃんだが、

そう簡単に漁場を荒らされても困る。

経歴詐称してまでしがみついて来たこのポジションは

俺の免許皆伝が無い奴に定住されても困るんだ。


 想像してみる。俺が六弦を弾きながらRAPを歌う姿を。

悪くはない、悪くは無いが、需要はあるのか?

WEST SIDERと言う担当楽器で俺はエントリーしている。

そこに六弦と言う説明書きは一切無い。

勝手な妄想で、芸幅を拡げようとしているだけだ。

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