第7話

 このプロジェクトによる黒い資金の流れはあっという間に誰もが知ることとなり、町は不名誉な盛り上がりを見せた。渦中にいた長平は思案を巡らせていた。もちろんあの文書に押印したのは長平ではない。しかしあの文書に見られた印章は確かに長平のものであった。長平にはわかっていた。以前役場の後輩に自分の印鑑を手渡したことをはっきりと覚えていた。後輩の言う、新しい印鑑作りの参考にしたい、貸して欲しいなどという奇妙なお願いに応じた自分の不覚を恥じていた。その後輩は素行も良くなく、役場での評判も悪かった。まともに相談相手として接するのは長平の他に無かった。長平の印鑑を拝借し、おそらくは悪用した役場の後輩、そして彼には身重の妻がいた。

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