はじめての金縛り

「金縛りってどんな感じなのかなぁ?」


 心霊番組によく出てくる言葉。

『金縛り』。

 脳は覚醒しているのに身体は寝ている状態……。


「目が覚めているのに身体が動かないってどんな状態だろう」


 金縛りを体験したことがないとイメージすら湧かないもの。


「人生で一度くらい体験してみたいわ⭐️」


 私は呑気にそんなことを考えていた。

 そんな気持ちは中学二年生の頃、消え去ってしまう。


 その日もいつも通り一人で布団に横になった。


 しばらくすると体験したことのない嫌な感覚が私の全身を包み込んだ。

 本能的に感じる恐怖というのだろう。とっさに起きようとするが、身体に力が入らない。


 遠くから男だか女だかわからないがケラケラと笑う声が聴こえてくる。笑いながら走っているみたいだ。


 ――嫌だな、嫌だな、嫌だな。

 とても嫌な予感がした。その予感は的中してしまう。


 笑い声は私の寝ている場所まで近付いてくるとピタリと止まった。ちょうど私の真後ろだ。何かがいる気配がする。


 ――ヤバい!

 私はがむしゃらに身体を動かそうとした。

 全然動けないけど必死に抵抗を試みた。

 なんとか目を開けると身体は動くようになっていて、真っ暗な寝室の布団の中に私はいた。


 夢かな、と一瞬思ったが嫌な感じは消えなかった。


 その日は怖くて、親の側で眠ることにした。

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