幸無しナナカの恋愛事情
碧空
七月菜々香、幸せに出会う
世の中ではラッキー7なんて言葉はよく聞くけれど、私にとって7という数字はとても不吉な数字だ。
私が7歳になった日、いつもより早く学校への道を歩いていた午前7時、交通事故にあった。
本当に幸いなことに生きてはいたが、私はルールに従って横断歩道を歩いてきたら車が突っ込んできたんだから、まあなんというか、運が悪いとしか言いようがない。
以降私は7という数字が重なる日時、あからさまな不幸に襲われるようになる。
例えば7月7日──これが自分の誕生日なのだが普段はそんなことしない犬が噛み付いてきたり、鳥の糞が頭上に降ってきたり。
一体私何をしたっていうんだ。
世の中は空の向こうの恋人達に祈りと願いを捧げる中、私は自分の誕生日であったその日、7という数字が呪いになった。
さて、私の名前は
神様、私なんか悪いことでもしたんですかね?と問いかけたくなる。
恨み言の1つ2つも言いたい所だがこれ以上嫌なことが起きてほしくはないのでぐっと我慢した。
自己紹介に戻ろう──今年17になった高校生2年生だ。そう、17。
そして7月7日、午前7時。運命の日時。
私は学校を休もうとしていたが、そんなバカみたいな理由で休むやつがあるかと家からたたきだされ、曇り空の下に立っている。じゃあせめて1時間遅れて登校させてくれてもいいじゃないか…。
七夕なのに曇り空って、だめだろう…。すでに先行きが不安である。
ああ神様、私せめて死にたくないんですけど、今日くらいは見逃してはくれませんかね?と柄にもなく祈りを捧げながら横断歩道を足早に歩き去ろうとしていると、アクセル全開でこちらへ突っ込んでくる車が見えた。
あっ、終わった。今度こそ人生終わった。
そう思いながら一瞬の間で脳裏に走馬灯を浮かべていると、腕を引っ張られた。
「えっ。」
次の瞬間私は車と体がこんにちはすると思っていたのだが、実際には同い年くらいの黒髪の男子が私を抱えて道の端に座り込んでおり、暴走していた車は近くの空き地につっこんでいた。
「何やってんだよ馬鹿、死にたいのか」
耳元で少し怒気をはらんだ声が聞こえてはっと顔をあげると、不機嫌そうな表情を浮かべる救世主の顔が見えた。
「そ、んなわけない。ただ、足が動かなくて…」
緊張が溶けたせいなのかボロボロと涙が溢れる。それを見た彼は眉をひそめ、はぁとため息をついた。
「まあ、そりゃそうだわな。悪かったよ。ただ、気をつけてくれよな。俺だって目の前で人が轢かれるとこ見たかねえんだよ。」
そう言ってヨイショと彼は立つと。
「じゃ、気をつけて学校行けよ。」
と、去っていこうとした。
「ま、待って。」
「あ?なんだよ。」
相変わらず不機嫌そうな表情だがくるりとこちらを向いてくれる。口調も少々乱暴だが言ってることはとても普通だ。
名前、知りたいな。
「助けてくれて、ありがとう。私、七月菜々香。あなたの名前は?」
真っ直ぐに目を見て話すと、少し目を広げて驚いた顔をしていたが。何も言わずにすっと背を向ける。
「ちょ、待っ……いつっ…」
あわてて追いかけようと思ったが走ろうとした所で足に鈍い痛みを覚える。どうも先程ひねってしまったらしい。事故に合わなかったし、これくらいの不幸はむしろ幸運と言ってもいいだろう。
足を庇って歩きだそうとしていると、地面に落ちていた自身のカバンが宙に浮く。
目の前には私のカバンを持っている先程の彼。
「ほら、乗れ」
彼はすっとしゃがむとそう言った。お、おんぶですか!?
「えっ、いや重いし」
「放置するほうがめんどい」
「でも」
「いいから」
さすがにそんな事はさせられないと断ろうとしていたが、結局折れたのは私の方だった。
「…ありがとう、何から何まで」
「いい、別に。ここで放っておくの気持ち悪いだけだし。」
すごい、優しい。見ず知らずの人にここまでしてくれるなんて。なんだか、ギューッと胸が締め付けられる気持ちになった。
「…ナツキでいい。」
「えっ」
「夏樹。俺は
彼は耳元が少し赤くなりながらも、私のカバンを持ってそう言っていた。
あ、私、この人のこと好きになったのかもしれない。
「夏樹、くん」
「うん」
「本当にありがとう」
7月7日、午前7時過ぎ、七月菜々香は初めて幸運に出会った。
幸無しナナカの恋愛事情 碧空 @aon_blue
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