第24話 教師と妹
数時間後、陽菜が学校から帰ってくる。リビングのソファーに腰掛けていると陽菜が心配そうに頬を触ってきた。
「何すんだよ」
「えっと、だって。お兄ちゃんもう平気なのかなって心配で」
陽菜がまた今度は額を触ってきた。
「触ってもわかんねえだろ」
「うん、でも、何となくお兄ちゃん、昨日より元気になったみたい」
陽菜に言われて確かに体調は戻っていると改めて実感する。
「もう良いだろ、触んなよ」
「うん、ごめんなさい。食欲あるかな」
昨日よりは食欲があって腹が減っていた。
「ああ」
「良かった、じゃ、今作るね」
陽菜はそう言うと台所に向かった。そんな時、呼び鈴が鳴り俺は立ち上がり玄関に向かう。
「美咲、来んなっつったろ」
「良いじゃない。看病に来てあげたんだから。中に入れなさい。仁が好きそうなものを作ってあげるわ」
美咲は無理矢理中に入り陽菜に声をかけた。
「陽菜ちゃん、お久しぶりね。仁のご飯は私が作ってあげるから、貴女は受験勉強なさい。貴女、今年受験なんだから仁の看病なんてしていたら駄目よ」
美咲は陽菜を台所から追い出し陽菜は残念そうに俺の隣に腰掛けた。
「追い出されちゃった」
「陽菜はもう良いから、自分の部屋で勉強でもしろ」
陽菜は始め嫌そうな顔をしたが渋々自室に行った。
「お待たせ。出来たわよ。食べさせてあげるわ」
出来た夕飯を箸で掴み口元に運んでくる。
「良い。自分で食うよ。何で女ってこんな事したがるんだろうな」
「何、誰かにもされたの?」
美咲は皿におかずを置きそう聞いてくる。
「陽菜にな」
「そう、陽菜ちゃん。でも残念ね。陽菜ちゃんには仁を手に入れることは出来ないわ。キスも出来ないし、もちろんその先もね。だってあの子はまだ中学生だし、仁と兄妹なんだもの」
陽菜の俺に対しての感情を、美咲はすぐに気がついたみたいだ。
「やることやってるお前とだって、それ以上になるつもりはねえよ。それに、俺は美咲にとって都合の良い玩具だろうが」
「あらやだ。仁の事を一度だって玩具だなんて思ったことないわ。仁は私にとって二番目の彼氏なんだから」
美咲はそう言うと顔を俺の方に近づけてきて口づけをしようとする。
「やめろよ。風邪うつんぞ」
「別に良いわよ。仁の風邪なら、貰ってあげる。私が貰ってうつったら、今度は泊まりがけで看病に来なさい」
美咲はさっきよりも顔を近づけてくる。両手で体を押さえ、行きたくねえからやめとくわ。めんどくせえと言って離れた。
「つれないのね。でも、そんな仁も好きよ。愛してるわ」
「は、言ってろ。作ったのは仕方ねえから食ってやるから、さっさと帰れ」
美咲を追い出すように部屋から出して鍵を閉めた。陽菜の部屋に行き、扉を叩く。中から陽菜の声がして扉を開ける。
「美咲さんは?」
「あいつはもう帰った。陽菜、わりいんだけど、お粥、作ってくれるか」
陽菜は不思議そうに、だけど嬉しそうに俺の方に来ると、うんと言った。
「あいつ、病人に唐揚げ作りやがって。いくら昨日よりは良くなったとは言え、食えるかっての」
陽菜は小さく笑い、そうだねと言った。
お粥が作り終わるのを待ち、十分ほどしてからお粥が出てきた。
「悪いな。陽菜はあいつが作ったの食べろよ」
「うん、そうする」
美咲の作った夕飯を食べながら陽菜は溜息をつく。
「どうした?」
「うん、美咲さんって良いお嫁さんになりそうだなって。美味しいから」
そんな事でいちいち落ち込むなんて、まだまだ子供だなと思った。
「いや、でもあいつは変態だからな。あいつの旦那になる奴は浮気されて大変だと思うぞ。だいたい、一人で収まる器じゃねえし。俺の事、二番目の彼氏とかほざきやがって」
「二番目、陽菜ならお兄ちゃんが一番だよ」
陽菜が箸を置いてみてくる。俺はそらすように陽菜の作ったお粥を食べ始めた。
「そう言う事言ってんじゃねえぞ。俺は兄貴でお前は妹なんだから」
「うん、わかってる」
陽菜が箸を持ちまた食べ始める。
ー続くー
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