第23話 二番目の彼氏

 「お兄ちゃん、陽菜のせいでごめんなさい」


 「良いよ、もう。うるせえから黙れ」


 陽菜を黙らせて先に歩き出す。家に着いた俺は自分の部屋に行きベッドに横になった。


 「お兄ちゃん?」


 陽菜が入ってきてベッドの側に座った。


 「何してんだよ。今、風邪引いてんだからうつるぞ」


 「うん、あのね、お兄ちゃん。お義父さんとのこと、陽菜のせいでごめんなさい」


 父親との事を陽菜は気にしているらしく謝ってきた。


 「別にお前のせいじゃねえよ。あいつは前にもあのくそ婆を選んだんだ。実の息子よりあのくそ婆が良いって事だろうよ。そんな事をいちいち気にしてられっかっての。今は本当に体調が悪いだけだから気にすんな」


 「えっと、うん。わかった。じゃあ、お家にお薬ないみたいだから買ってくるね」


 陽菜は立ち上がり部屋を出て行った。一時間ほどして、また扉が叩かれ陽菜が小さい鍋と茶碗を持って入ってきた。


 「お兄ちゃん、お粥、作ってみたの。食べれる?」


 正直そんなに食欲はなく、放っておいて欲しいとも思ったが、せっかく作ってくれたものだしと考え直し、ベッドから起き上がる。


 「余計な事してんじゃねえよ」


 「言うと思った。でも、少しは食べないと」


 陽菜が茶碗に作ったお粥をよそい、レンゲに乗せると息を吹きかけ食べさせようとしてくる。


 「うぜえ、やめろ。自分で食えるわ」


 「こう言うの、やってみたかったのに」


 陽菜は寂しそうな表情になる。


 「今じゃなくても良いだろ。お前に彼氏でも出来たらそいつにやってやれよ」


 「陽菜は、お兄ちゃんにしたいの。駄目?」


 思わず、わかったやって良いよと言いそうになる表情をされて、俺は陽菜から顔をそらす。


 「駄目に決まってんだろ。何考えてんだよ。良いから出てけよ、ちゃんと食うから」


 「わかった。お兄ちゃん、ありがとう。助けてくれて。陽菜にとってのお兄ちゃんは世界一格好良くて強い自慢の好きな人だよ。大好き」


 陽菜はそう言うと立ち上がり部屋を出て行った。


 何故か陽菜を可愛いと思ってしまった。そして、妹じゃなければ良いのにと考えてしまった。こんな感情、間違っている。俺と陽菜は義理とは言え兄妹だ。兄貴が妹を好きになることなんてあってはならない。しかも陽菜は、今年受験とは言え中学生だぞ。中学生に惚れて良い訳がない。だからこんな感情、早く忘れるべきだ。それにきっと、今自分は体調が悪くて、弱っていて居る時にあんな事を言われたからその気になってるに過ぎない。そう、一時の気の迷いだ。そうに違いない。


 陽菜が作ったお粥を食べながらそんな事を考えていた。


 三十分後、お粥を食べ終わり薬を飲んで横になっていると陽菜が入ってきた。


 「お兄ちゃん、お粥、どうだった?」


 「不味かった。食えねえかと思ったわ」


 陽菜の顔を見ずにそう返すと陽菜は、悲しそうな口調で、そっか、今度は美味しく作れるように頑張るねと言って部屋を出て行こうとする。


 「待てよ。嘘、うまかなかったけど、まあまあだった。また作ったら食ってやっても良い」


 何となくそう声をかけて陽菜は嬉しそうな口調で、うん、また作るねと言って出て行った。


 翌日、薬が効いたのか微熱と喉が痛かったがだいぶ動けるようになった。バイトに行こうとも思ったが、さすがに今行くとまた晴にどやされて面倒くさいことになりそうだと思いやめた。


 昼頃、特にやることもなく、適当にベッドの上で携帯を弄っていると突然鳴り出し驚いて顔の上に落とした。


 「痛っ」


 携帯を持ち直し確認すると美咲からだった。


 「あ、もしもし。仁、今夜いつもの所に来なさい。待ってるから」


 「無理、今、風邪引いてるから」


 美咲は、そうと言うと小さく笑う。


 「おい、うちに来るとか考えてるんじゃねえだろうな」


 「もちろん考えてるわよ。だって仁は、私にとって二番目の彼氏なんだから」


 二番目の彼氏って初耳だ。いつ俺が美咲の二番目の彼氏になったんだ。


 「なった覚えねえよ。俺とお前は後腐れねえ関係だろ。二番目の彼氏なんて面倒くせえしごめんだ。それに、一番は誰なんだよ」


 「やっぱり気になるのね。一番は、晴よ。あの子は仁と違って優しいし、私に従順なの」


 まあ、普通に考えたら晴だろうなとは思った。


 「とにかく来んじぇねえぞ」


 「行くわ。じゃ、また後でね」


 美咲は通話を切ってしまった。また面倒なことになりそうだと直感した。


ー続くー

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