おもちゃあそび

shiyu

第1話 家庭内での絶対的権力

 うちの両親は狂っている。


 今の母親は俺にとって二番目の人で実母は俺を産んですぐに亡くなったと聞いていて、顔すらも覚えていない。それから数年後に新しいお母さんと妹だよと紹介された。初めの二年ほどは仲良くやっていたが義母は徐々に正体を現し始め、自分の娘の陽菜を何かに付けては虐待し始めた。


 幼かった俺は何度も父親に相談したが、家庭内での絶対的権力は義母にあり逆らう事は許されなかった。それでも陽菜を自力で助けようとしたが、義母に逆らうと食事を与えられずに二人で家を追い出されるなんて事は度々あって出来なかった。


 そんな当時の俺の夢は、陽菜を助ける救いのヒーローになること。


 だけどそんな夢は夢でしかなく、中学生になる頃には弱い自分を隠し、逃げるようにあまり家に帰らなくなった。そして父親も同様、家に寄りつかなくなってしまった。


 高校に進学してからも夜遊びを繰り返してたまにしか家に帰らない。そんな生活を続けて三年が過ぎた高校三年生の春。


 「よお、仁。お前もサボりか」


 「始業式なんて出ていられるか。かったるい」


 学校の屋上で煙草をふかしていると一之瀬巧が肩を叩いてきた。


 「言えてる。なあ、それ一本くれや。ちょうど今、切らしてんだわ」


 「誰がやるかよ馬鹿野郎。自分で今からでも買ってこい」


 巧は俺の言葉を無視して制服の隠しているところから煙草の箱を取った。


 「勝手に取ってんじゃねえよ」


 「良いじゃん、煙草の一本や二本ぐらい。減るもんじゃねえし」


 巧の言葉に減るだろとつっこみを入れる。


 「まあまあ良いじゃん」


 「良くねえし。死んどけ、あほが」


 巧との会話にはいつも暴言が入り、巧もそれを受け入れている。入学したての頃はそれほど仲が良いというわけでもなく、お互いのことが気に入らず、殴り合いの喧嘩をしょっちゅうしていた。今ではそこまでの喧嘩はなく、それなりに上手くやっていると思う。


 「そういや、美咲ちゃんとはどうなんよ」


 美咲というのは担任の女教師で、まだ一年の頃、お節介の美咲に何か悩んでいることがあるなら相談してと言われ、それまではそんな事を言われたことが無かった俺は陽菜のことを素直に相談した。すると美咲は可哀想に。先生が嫌なことを忘れさせてあげると言いながら流れで体の関係を持った。それから今の今までだらだらと関係を持ち続けている。


 「別に何も変わんねえし。普通っつうか、美咲は相変わらず変態だ」


 「担任を変態呼ばわりかよ。うけんな」


 巧は軽く笑い出し、短くなった煙草の火を足で消し、携帯灰皿に捨てる。


 「教え子襲う教師なんだから変態だろ」


 自分も吸い終わった煙草の火を消して携帯灰皿に捨てた。


 「襲うっつても、仁も美味しい思いしてんじゃんよ。ああ、俺も犯ってみてえな」


 「いやいや初めは襲われたし。初めてだったのに僕の純情をって感じ」


 少し笑いながらそう言うと巧は純情ってお前、入学した時は今より遊んでますって感じが出てたぞ。だから狙われたんじゃねえのかと返してきた。


 「それでも初めては美咲よ?」


 「そうかよ。けど、美咲ちゃんなら可愛いから良いじゃん」


 確かに美咲は可愛くて美人だ。だけど、他の教え子や下級生を自分の教師という立場を利用して喰っているというとんでもない変態教師だ。


 「お前も美咲に頼んだら犯らせてくれるかもよ」


 「そうなんか。じゃ、今度頼んでみるか」


 そんな会話をしていると屋上の扉が開く音がする。


 「駄目じゃない。ここは立ち入り禁止よ。それに、ちゃんと始業式も参加しなさい」


 声をかけてきたのは美咲で噂をすればなんとやらと思った。


 「美咲ちゃん、見逃してよ。どうせもう、始業式終わってホームルームだけなんでしょ。出るのかったるいよ」


 「仕方ないわね。じゃ、竜崎くん。後でいつもの所にいらっしゃいね」


 美咲はそう言うと屋上を出て行った。


 「良いな、俺も参加してえ」


 いつもの所とは視聴覚室で、そこで襲われるように美咲の性欲処理をする。


 「変わってやろうか。別に俺じゃなくても良いんだと思うし」


 「良いよ。美咲ちゃんは仁をご指名なんだから」


 口を籠もらせるように巧はそう言うと溜息をついた。


 数分後、巧は先に帰り俺は視聴覚室に向かう。


ー続くー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る