第3話 対話
(私さえいればよくないって......)
「えっと、まず聞きたいんだけど、あの子って誰?」
「木下さんや、一緒にいた子」
その回答を聞いてやっと納得した。あの時、悪寒を感じたのは、美優からの視線だったことに。
「それで、なにを話していたの?」
「普通に雑談だよ」
「へ~。雑談なら私とすればよくない?」
「ま、まあ美優と話すのもいいけど、それ以外にも友達は欲しいしさ」
俺の言葉を聞いた美優は、フィギュアを捨てようとしたときみたいに淀んだ瞳をしていた。
「浮気」
「え?」
「だから、浮気するんだ」
「ちょっと待って、浮気ってなに?」
(俺たち付き合ってないよね!? それなのに浮気ってなんだ?)
「私と一つ屋根の下で暮らす予定なのに、ほかの女の子に現を抜かして、私にかまってくれない。浮気としか言えない」
「......」
美優の考えがぶっ飛んでいて驚きを隠しきれなかった。
まず、一つ屋根の下で暮らす予定っていうのは、理解している。家政婦としてやってきてくれるし、朝夜のご飯をともにするから。
でも、ほかの女の子と話しているだけで、美優にかまっていないわけではない。それこそ、今一緒に話している時点でかまっているはずだ。
(まあ、構うって言う概念がおかしな話だけど)
だけど、美優の顔から嘘を言っているとは感じられなかった。
「えっとね。俺だって友達ぐらい作って学校生活を楽しみたいんだよ。美優だって大切だよ? でも、友達も大切じゃない?」
「私、友達がいないからわからない」
その言葉を聞いて少し驚いたが、少し思い出せばわかることだった。
なんせ、美優が通っていた中学は上野や木下さんも通っていたわけだから、同級生が何人も通っていておかしくない。それなのに、昨日美優は誰とも一緒にいなかったのだから。
「じゃあさ、一緒に友達を作ろうよ。俺も協力するからさ」
「......。ゆうくんさえいればいい」
「俺は美優と一緒に学校でも話したいな。それこそほかの友達を含めてさ」
俺の言葉に美優はうつむいた。
「これから上野たちと絡む機会が増えると思うけど、美優が上野や木下さん、石川さんと友達になったら、一緒に入れる時間も増えるしさ」
すると、美優は少し考えたのち、俺に言う。
「わかった。じゃあその件はもういい。なんで朝あったときに秋山さんって呼んだの?」
「いきなり下の名前で呼ぶと付き合っているか勘違いされるから」
俺の言葉に美優は不服そうな表情をしていた。
「それじゃあ、学校では苗字呼びってことでいい?」
「うん」
俺がそういったのと同時にチャイムが鳴ったので、一緒に教室へと戻っていった。その時、何か美優が言っているのか聞き取ることができなかった。
「どうすれば、ゆうくんが私のものってみんなに知らしめればいいかな? まずは.......」
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