七夕に777を揃えたかった男

@momomomom

7/7

 財布の中には野口英世が一人。頼もしい顔をしているが、頼りがいは一切ない。しかし僕の味方はもう彼しかいない。ほかの英世は既に散ってしまったからだ。


 フリーターの僕はパチンコ屋に来ていた。今日は七夕。7がふたつも揃う縁起の良い日。だから僕は手持ちの福沢諭吉、野口英世を総動員して戦いに来た。しかし、結果はこの有様だ。彦星と織姫はめでたく逢瀬しているというのに、僕は何人もの諭吉、英世との別れを強いられていた。あまりの不公平に、悔しくて涙が出そうだった。


 ふと脳内にカレンダーの映像が浮かんだ。今日は7月7日。次の給料日は7月25日。あまりにも憔悴しきっていて、残り何日なのかは計算できないが、絶望的な日数であることだけは分かる。このままだと、僕はこの日数を残された小銭だけで生き延びなくてはならない。溢れ出る冷や汗がクーラーで冷やされて、全身に悪寒が走った。 


 とはいえ、ここまで追い込まれたからこそ得られたものもあった。僕は悟りを開いたのだ。お金は楽して稼ぐものじゃないと。泡銭。悪銭身につかず。Easy come, Easy go.

 僕は決断した。最後の千円札を使い切ったら、これでギャンブルは引退する。お金が欲しければ働く。泡銭を座右の銘にして、真っ当に生きていくのだ。ここまでに使ったお金は勉強代だったのだ。


 不思議と、心はすっきりしていた。最後の千円札を手に取り、それを差し込み口に丁寧に押し入れる。右手を捻り、玉を送り込んでいく。

 液晶に現れるたくさんの数字。それらは走馬灯のように移り変わっていった。これでお別れなんだ。これで良かったんだ。


 突如、台が爆音を出しながら激しく震えた。

 液晶に表示される7 7

 呆然としながら眺める僕を横目に、天の川みたいに光る三つ目の金色の7がゆっくりと近づいてきた。

 777

 けたたましい音と光を浴びると同時に、頭の中で何かが崩れる音がした。

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