第5話 王都の城壁を守れ


※スキップ推奨の回です。一応の繋がりがありますのであらすじを書いておきます。


「あらすじ」


 とあるテーマパークにジョニー、甚、カッキー、そしてカスミ、リンダ、カルアの六人で訪れる。フルダイブ型のゲームを進めていくうちにジョニーはカスミへ少しずつ惹かれていくことに気付く。またリンダもジョニーへの好意をアピールし始める。


 なんやかんやでジョニーがちょっとモテ期に入って来たというお話です。リンダの趣味コスプレ描写などもあります。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 大きくそびえ立つ壁。王都をぐるりと囲むそれは、これまで百年に渡り人々を守ってきた。時に他国の侵略から。時に魔物の襲撃を跳ね返し王都の平和を守り続けた。


 だが今その壁の中の平穏は破られようとしている。突如として現れた圧倒的な力を持つ魔王の誕生。魔物の数は急激に増え、街や村を襲う。王都軍も必死の抵抗をみせるがもはや壊滅寸前。


 王国の命運はとある冒険者パーティーに委ねられた。


  その名は紅蓮の双璧――


 ジョニー(譲二郎) 勇者 

 HP/1105 MP/108 攻撃力/888 守備力/596

 スキル/一刀両断 不屈の精神 勇気百倍 孤高の守り



 リンダ(風間鈴雫かざまりんだ) 魔法使い

 HP/289 MP/999 攻撃力/15 守備力/187

 スキル/炎魔法 雷魔法 魅了魔法 


 

 カスミン(北条霞美ほうじょうかすみ) 武闘家

 HP/1280 MP/470 攻撃力/1111 守備力/412

 スキル/蒼葬一閃そうそういっせん 光天乱舞こうてんらんぶ 睨み

 

 

 カルア(藤原花瑠杏ふじわらかるあ) 聖女

 HP/589 MP/853 攻撃力/205 守備力/377

 スキル/光魔法 癒しの風 酒豪


 

 ジン(花咲甚)  盗賊

 HP/873 MP/211 攻撃力/777 守備力/777

 スキル/隠密 弱点看破 特殊攻撃 



 カッキー(柿ノ下慎平) 道化師

 HP/153 MP/85 攻撃力/99 守備力/71

 スキル/賭博必中 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 遡ること数時間前――

 

 今日は鈴雫ちゃんに誘われ、最近出来た近未来型アトラクションテーマパークへとやってきた。集まったのはこの前の飲み会の面子めんつだ。


「リンダちゃん、今日はコスプレ写真撮影会じゃなかったの?」


「そのつもりだったんだけど、どうせなら楽しい方がいいでしょ!」


 そう言われて連れて来られたのは、このテーマパーク最大の売りでもあるフルダイブ型のVRRPG。自分でゲームキャラをデザインしプレイする。特製のヘッドギアを付け、意識も視点も感覚も全てゲームの中でバーチャル体験できる。


「フルダイブなんだからわざわざコスプレする必要あった?」


 おれは勇者のレンタル衣装に身を包み鈴雫ちゃんに尋ねた。


「やっぱりコスプレして気持ち高めないと~うちの衣装どう?」


 魔法使いの恰好をした鈴雫ちゃんがくるりと一回転する。黒いマントに黒いピッチピチのワンピースは胸元がザックリ開いている。


 なるほどなるほど。確かに気持ちがたかぶる。


「ジョニーくん、顔がニヤケまくってるよ」


 純白の聖女の衣装に身を包んだ花瑠杏ちゃんがおれにチョップしてきた。


「おお聖女様! これはまごうことなき神の遣い……」


「いやいや。私はお酒で清めるくらいしかできないから」


「ねぇリンダ。私の衣装ってサイズ合ってます?」


 パツパツのチャイナドレスを着た霞美さんが現れた!

青いそのドレスの背中には昇り龍。大きく入ったスリットから覗く太ももに思わずおれは息を飲む。


 ゴクリ……強い……こいつは強敵だ。


 そして霞美さんの後ろから盗賊風の甚とピエロの恰好をしたカッキーがやってきた。まぁよく見る衣装だわな。


「おいおい! おれらのコスプレにリアクション薄すぎだろ!」


「さーさー、じゃゲームしに行くよ~」


「ちょっとリンダちゃん! 今日もおれの奢りなのに……」



 項垂うなだれるカッキーは放っておいて、おれ達はフルダイブゲームのアトラクションへと向かった。


 ヘッドギアを付けそれぞれ一人用のカプセルへと入る。カプセル内ではマイクを使ってみんなとコミュニケーションが取れる。


 おれたちが選んだのは「魔王ヴェルナスを討伐せよ!」というゲームだ。ジョブは自分で選ぶことができ、ステータスやスキルはランダムで決められる。

キャラメイクはなぜかみんな今着ている衣装とほぼ同じになった。



「じゃあジョニー。パーティ名決めちゃって~」


「OKリンダちゃん~じゃあ。ほいほいほいっと」


「紅蓮の双璧? なんかかっこいいじゃん! どんな意味なん?」


「ん~リンダちゃんの双璧が今日は素晴らしいなと思いまして」


「いや~んジョニー。Gカップだよ♡」


「ジっ! G! けしからんなまったく」


「はいはい。じゃあ早く始めるよ~」


 花瑠杏ちゃんの一言でゲームのオープニングが流れ始めた。




「王都を守るとは、これまた大変なミッションを与えられたものだな」


おれ達六人は森を歩いていた。魔王城へ向かうにはまずここを抜けなければならない。


「おっいいね~ジョニー。なりきってんじゃん」


「油断するなよリンダ。一人のミスがパーティの命運を分ける」


「うちは後衛から魔法打ちまくるだけだよ~あっ!魔物きたよ~」


 茂みの中からスライムとゴブリンの編成パーティが現れた。


「ジンっ! やつらの弱点はどこだ!?」


「弱点もなにも、雑魚キャラだから切りまくれ。てかジョニーのりのり過ぎだろ……」


 おれはスキル「一刀両断」を使い横薙ぎに大剣を振るった。敵パーティは一瞬で霧散する。


「すご~い! さすが勇者じゃん! うちの魔法の出番なさそ~」


「いや、そんな大技スキル使うなよ。MPなくなんぞ」


「へ? これMP消費すんの? ほんとだー10も減ってる」


「それよりおれのスキルって何? 賭博必中とか使うことないだろ!」


 おれは叫ぶカッキーに静かに歩み寄ると声高に宣告した。


「カッキー! おまえをパーティから追放する!手持ちの有り金置いてパーティー抜けろ!」


「いやジョニー、ラノベの読み過ぎな。そもそも金出してるのおれだから」


「チッ! ここは一旦追放されて強くなって帰ってくる流れだろ?」


「おいっ! また敵が来たぞ!」



 索敵をしていたジンが叫んだ。森の中から現れたのは大型のフェルリン。こいつはおそらく中ボス。


「白銀のフェルリン討伐」という表示が目の前に現れる。おれとジンが前衛へと展開し、中衛にカスミン。リンダとカルアは後衛に下がる。


 カッキーは……逃げ出した!


「カルア! 支援頼む!」


「任せて! 大いなる天の力よ、今満ちて我らを照らさん……ソルアージ!」


 体が光に包まれる。攻撃力、防御力が上がった!


 ジンがフェルリンの斜め後ろに素早く飛び込みヘイトを集める。おれはジンとは反対方向へ飛び込むと大剣を一気に振り下ろす。


「ぐっ……硬い!!」


 ダイヤでできたフェルリンの体毛に剣が弾かれた。


「ジョニー避けて! うちがとっておきぶっ放すよ~! メガフレイムランス!」


 リンダの頭上に魔法陣が展開され炎の槍が次々にフェルリンを襲う。激しい爆音と衝撃でおれは吹き飛ばされた。


 フェルリンは紅蓮の炎に包まれ咆哮をあげた。


「やったか!?」


 攻撃が止み煙の中から光と共にフェルリンが再び姿を現す。銀色の毛は先程よりも輝きを増していた。


「なにっ! 効いてないのか!?」


 そう叫んだおれにフェルリンが飛び掛かってきた。

 

「ジョニー!!!」


 目の前に鋭く光るフェルリンの爪が迫る。これは回避は無理か……


 その時、ジンがおれを庇うように飛び込んできた。背中を爪で切り裂かれるジン。


「ぐわぁああっ!!」


「ジンっ! おまえなにを!」


「ハァハァ……あいつを倒せるのはおまえだけだ……奴の弱点は鼻だ!」


 そうおれに告げるとジンは意識を失った。


「カルアー! ジンを頼む!」


 急いで駆け付けたカルアがジンにヒールを掛ける。おれは再びフェルリンの前に走り寄り剣を構えた。


「喰らえっ!! 一刀両断!」


 フェルリンの鼻っ面めがけ剣を振る。




 ヒョイっ。



 あれ?大振り過ぎました?


 おれの必殺スキルはかすりもしなかった……


 呆然とするおれにフェルリンが牙を剥き出しにして襲いかかってきた。


 

 「やべ……」



 その時、おれと入れ替わるようにカスミンがフェルリンと対峙する。

 

 腰を深く落とし、正拳突きの構えを取る。その瞳には青い光が宿っていた。



 ――あの時と同じだ。



 おれは大畑を一撃で仕留めた霞美さんの姿を思い出した。凛々しくも美しい。


 僅かな胸の高鳴りをおれは感じていた。



 「せぇいやっ!!!!!」


 目前に迫るフェルリン。それに合わせるようにカスミンは拳を打ち抜いた。


 青白い炎に包まれたその拳がフェルリンの鼻を粉砕した。



「……蒼葬一閃」

 


 見事な残心を取る彼女は青く光輝いていた。


 いや、これもうこのゲームのパケ写でよくない? かっこ良すぎなんよ。


「すご~い! カスミンさっすがだね~」


 出たよ! リンダちゃんのむぎゅむぎゅ抱擁。ちっおれが倒していれば……


「おいおい。怪我人の心配はなしかよ」


「おおっジン! 大丈夫だったか? やっぱ痛いの?」


「いや全然。なんかビリってちょっと電流流れたくらい」


 どうやらVRとはいえ、そこのリアリティは再現していないようだった。


「ところでやっぱカスミン凄かったね~助けてくれてありがとう」


「いえ、体が勝手に反応してました。その……ジョニーくんを守りたくて……」



 おや? 吊り橋効果ってやつ? 霞美さんは少し頬を染めていた。


「お~やっと倒したねぇ。ご苦労ご苦労」


 茂みの中からピエロのカッキーが笑いながら現れた。

 

「おまえ速攻で逃げたな! せめて囮にでもと思ったのに」


「いやおれのステータス見てよ。瞬殺だよ。それよりなんか変な玉拾ったんだけど」


 カッキーは光り輝く透明な玉をおれ達に見せた。


「ラスボスで使うのかな~? とりあえず先に進もう」



 それからおれ達は森を抜け荒野を突き進んだ。そして遂に魔王城へと辿り着いた。





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