【お題:眠れない夜】先輩とホットミルク

 死んだら、どうなるんだろう。


 そんなことを考えていたら、眠れなくなってしまった。


 重たい体を起こして、ベッドから出る。時間は午前1時。明日の予定が何もなくて良かった。


 私は、キッチンへと向かった。 


「うぅ……さむい……」


 ミルクパンで牛乳を温める。沸騰するまでやることもないので、コンロで暖を取った。


 ホットミルク。先輩がよく入れてくれた。私が、コーヒーや紅茶が苦手だったから。


 だいぶぐつぐつしてきたので、火を止める。猫舌だから、これぐらいが調度良い。


「いただきます」


 口の中にじんわりとホットミルクの温かさが広がった。先輩と飲んだ時は、心まであったかくなったのにな。


 先輩、今頃何しているんだろう。初めて恋をしたのが先輩だった。こんな私を、先輩は優しく包み込んでくれて。とても幸せだったことは覚えている。


 先輩との思い出はたくさん覚えている。覚えているんどけど、もう先輩の声も、仕草も表情も、だいぶぼやけてしまった。


 ホットミルクを飲み終えた私は、ベッドに戻った。体がぽかぽかする。これでもう、寝ることができそうだ。


「おやすみなさい、先輩」

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