第25話

 塔を目指して歩く。もう何度も通った道だ。途中のゴブリンやコボルトは避けていく。相手をしていると、そこに更にわらわらと集まってくるからだ。


 相手をしていられない。


 どうしても避けられない場合だけ急襲して排除する。


 最初ころは2時間以上もかかっていた道を1時間ほどで到着。


 塔は封鎖されているとは言え、誰かが閉ざしているわけでではない。見張りが居るわけでもない。いちおう防護柵が拵えられていはいるが用を為していない。


 防護柵の脇を通り、天空の塔の扉を開く。中から淀んだ空気が吐き出された。中は驚くほど静かだ。1階の庭園のような場所を抜ける。


「階段はどこだろう?」


 探して歩く。途中でコボルトに遭遇したが速やかに排除した。一匹だけだともはや敵じゃない。塔の中を階段を探して歩く。すると中央と思われる場所に大きな階段があった。ソロリソロリと登っていく。埃と淀んだ空気が肌に鬱陶しくまとわりつく感覚。そのまま2階へと上がった。3階へと続く階段がある。レナに問う。


「どうする? 2階を探索してみる?」


 すると彼女は首を左右に振った。


 だよな。散歩に来たんじゃないんだ。最短距離を歩く方がいい。


 そのまま3階を目指した。3階に到着した。4階へと続く階段は近場にはなさそうだ。また探して歩く。塔の中をグルグルグルグル。時々ゴブリンやコボルトが出てくるが、塔の外程は出て来ない。


「どうなってんだ? 敵の数が少ないんだが?」


 俺の疑問にレナが答える。


「そうね。変だよね。外のほうが多いなんて……」


 ここが繁殖拠点じゃなかったのか?


 分からないことだらけだが、まぁ少ない分には良いので進むことにした。


 5階の階段を登り6階に到着。大きな扉があった。開いていみる。すると再び空気が吐き出された。臭い。獣の匂いがする。それもかなり強い匂いだ。


「臭いな」


 レナが頷き、2人で中へと入っていく。そこからは吹き抜けだった。5階分ぐらいはあるだろうか。階段がグルグルグルグルと螺旋を描いている。俺たちはその階段を登っていく。いちおう念のため。何があるのだろうと思って途中の部屋を1室だけ開いてみた。


 そこにはゴブリンが居た。どれもこれもが子供の個体のようだ。生まれたばかりにさえ見える。ぼんやりと宙空を眺めているだけで襲いかかっては来ない。続いて別の部屋も覗いてみたが同様だった。そっと扉を閉じる。


 レナが感想を述べた。


「どうやら此処が繁殖地のようね」


 しかし俺は別の感想を持った。


「繁殖地というより養殖地だな。まるで家畜のような印象だ。出荷を待っているだけの。餌を与えて肥えさせてという」


 いったい天空の塔で何が起きているんだ?

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