蒼い海なんて別に。

とぅかげ

第1話 独白なんて別に。

さて、いきなりだが今俺は海辺に来ている。

別に意味なんかない。けど気付けばここに居た。

なんて文字を頭に浮かばせながら文庫本を片手に波の音と最近ハマりの音楽を聴いている訳だが。今は何時なんだろうか。太陽が真上ら辺にあるから正午ぐらいなんだろうなというのは分かる。スマホを見ればって?スマホを見るとこのゆったりとしている雰囲気が崩れる気がするからという理由で意地でも見ない。本当いらない意地だよな。今日は確か木曜日。学校は行っていない。いわゆる不登校ってやつだ。高校に晴れて入学したは良いものの1ヶ月でこの有様だ。甘えと言われれば言い返すことも出来ない。言い訳するとすれば…なんか行きたくないとしか言えない。なんとなくの理由は自分の中で分かってる。いや分かってないのかもしれない。なんか歩き疲れた。コンクリート階段に腰掛けた。ぼーっとしていると。睡魔が襲ってきた。あぁ、眠いな。朧気な海が黒に染まっていく…。

 

 どれぐらい寝ただろうか。横になり寝ていたせいで頭や手に石が…痛い。空は油絵を彷彿とさせる美しいオレンジ一色になっていた。

「そろそろ、帰るかぁ。」

と、ため息混じりに独り言。久しぶりに声を発した気がするな。間髪を入れず、朝喋ったけどな、とツッコミを自分で入れる。哀れだこと。

 最寄り駅の中のちょっとした店が並ぶ場所(通称・ストミ)まで15分ぐらいかけて歩いてきた。正式な名前は知らない。昔からそう呼ばれてる。ストアと海を合わせてスト海(ミ)ってとこだろう。ストミの中にあるコンビニに寄って飲み物でも買って家に、なんて考えていた時泣き声が聞こえてきた。立ち止まり泣き声の方向を見てみると小さい子供、まだ小学生にもなってないような小さい子。迷子なんだろうな。ストミは特別広い場所ではない。なんなら小さいぐらいだ。近くに親が居るだろうしすぐ会えるだろうと知らぬ存ぜぬ、また歩き始める。我ながら酷い奴だ……


「あ、えっとぉ、どうしたの?」

あ、あれ?

気付いたらその子に話しかけていた。

「迷子?あぁ、泣くな、泣くな。」

返事もせずその子は泣きべそをかきながら怯えていた。そりゃ怖いよな。周りの視線が痛い。話しかけなければ良かったと少し後悔しながらティッシュで鼻水と涙を拭き取る。

「迷子か?」

と、もう一度。その子は頷く。

「お兄ちゃんが一緒に探すからもう大丈夫だ!」

無理やり笑顔を作った。あぁ、これは完全に笑えてない。が、その子の顔が少し明るくなった気がしたので良しとする。

「ありがと……あ、あのね、おねえちゃんとはぐれたの。」

聞く前に事情を教えてくれた。良い子だな。これはモテる。なんて気持ちの悪いことを考えていると

「あ、いた!鈴!どこ行ってたの?」

と大きな声。俺の出番なく見つかったらしい。早い。なんかこれはこれで…ま、いっか。

「すみません!うちの妹が!失礼なことしませんでしたか?あぁ、先にお礼を言わなきゃ、ありがとうございます!」

と矢継ぎ早に喋りかけてきた。俺と同い年ぐらいだろうか。綺麗な人だな。一瞬小説のような妄想がよぎったが、自制の為に頭を振り、

「あぁ、いえ俺は大丈夫です。良い子でしたよ。」

とテンプレのような返事。もう一度お礼を言ってもらってそれで2人とは別れた。

うん。そうだよね。そんな物語みたいな展開はないよね。何を勘違いしてんだよ俺…と見惚れと羞恥で紅くなった頬を叩きながら頭の中で呟く。と、話すためにしゃがんでいたせいで腰が痛い…。ってそういえばあの二人コンビニに入って行ったよな。はぁ。また会うとあれだしもうコンビニは諦めだな。今度こそ帰るか、と家に向かい始めた時だった。

「あれ?如月?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蒼い海なんて別に。 とぅかげ @toxukage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ