コードネームはアンラッキー７

コードネームはアンラッキー７

　ソイツのコードネームはアンラッキー7。

　何をさせても失敗ばかりする。

　でも、たまにはいいこともある。

　その日の失敗の７度目に一度。

　７のつく日。

　７を示す時間。

　意識されない場合の７つの音。

　そのどれかひとつがあれば、その一瞬だけソイツはマトモに仕事ができる。

　見習いのときは、何故かグラウンドにある木に引っ掛かっていたし、落ちたこともある。

　骨折してこの施設の病院に送られたこともある。

　訓練を乗り越えて外へ任務に駆り出された時も、その７のおまじないがあるかないかで仕事の出来が雲泥の差だった。

　尊敬、なんてものはなく、同行者はその日の自分の運のなさを各々嘆きそして天に祈る。

　７の恩恵が今日はありますように！

　けれども、運とは廻るもの。当たる日もありゃ外れる日もある。

　いつもいつもとはならないから、みんないつも運試し。

　あるものはアンラッキーの不運の巻き添えを食らってある組織から盗み出した、薬の成分分析と実験で得られたデータの写しを風で飛ばしてしまう。もちろんその横で飛び移りに失敗し落下していくアンラッキー７。

　またあるものはメモリーカードに読み取ったデータが自前の端末で確認しようとしたときに狙撃された。このときはアンラッキー７、全く気付いていなかったが狙撃された隣で握り飯を食っていた。

　たまに活躍したと思えば次の瞬間ドジを踏む。

　そうして彼は、自分に暗示を掛けた。

　７に縛られる自分は、７以外に反応ができぬようにと暗示を掛ける。

　そうして彼は、無意識に７にだけ反応するようになる。

　そうして彼は、なりあがる。

　今までのアンラッキーを払拭して組織の上層へと登り詰めていく。

　周りから集まる視線にも彼は動じない。それは７の縛りの範疇でないから。

　周りからの声も、彼にはどうでも良かった。

　ただ、ひとりのアンラッキー７。

　でも一人じゃどうにもならない、アンラッキー７。

　結局彼は、自分の組織を解体まで追い込んでそれからその世界からきれいさっぱり消えてしまった。