第124話
私が城下町にお忍びで遊びに行ってから数日。
何故か婚約者候補たちとの約束の日まで、兄様たちに拘束されて会えずにいたわけなんだけど……。
(どうしてこうなってるんだろうか……)
久しぶりって言ってもこの二週間、候補者たちの誰とも会わなかっただけなんだけど。
シアニル兄様からの洗脳がかなり大変だったことは言っておく!!
それでとりあえず、全員でお茶をすることになったんだよね。
何故かヴェル兄様同伴で。
うん、保護者同伴ってどういうこと!?
しかも集まったみんなが渋い顔をしている。
ヴェル兄様がいるからってわけじゃないみたいで、なんていうか、こう……落ち込んでる? みたいな?
「ねえ兄様、みんな何かあったの……?」
「ん? ああ……ヴィルジニアが気にすることはない」
内緒話をするために小声になったけど、返ってきた言葉が意味深で逆に怖いんですけど!?
というかいっつも忙しい皇太子殿下がここにいていいのか。
「兄様、お仕事は?」
「これも仕事の一環だ」
「ええ……?」
妹とその婚約者たちのお茶会に参加することが!?
おかしいでしょ、って思わず突っ込みそうになったけどさすがに過保護代表なヴェル兄様でも普段は良識的だし、今回に関してはきっと何か意味があるのだろうと私は突っ込まないで様子を窺うことにした。
「さて、今回お前たちには今回の婚約について他の皇子たちから改めて話がいっていると思うが」
「えっ、なにそれ私聞いてないんだけど!?」
「大丈夫だヴィルジニア、基本的に彼らがお前の婚約者候補で、お前が選ぶ側にいるということは変わっていない。もう少し、彼らの事情に寄り添った話をしただけだ」
「寄り添った事情……」
それって私には話せないってことですか!
思わず兄様をじっと見上げると、何故か頭を撫でられた。
違う、そうじゃない!!
「簡単に言うと、各々の立場があることは理解するがこの城に置いて何よりも優先すべきはお前の婚約者候補として、どう関係性を築きたいのか明確に意識するように手助けをしたと言ったところか」
「……うん?」
「ちなみにヴィルジニアに関しては俺の婚約者が名乗りを上げてくれている」
「……うんん!?」
なんだそれ、よくわからないけど大事になってないか!?
私が前世の記憶を持っているばっかりに変な悩みを抱えた結果、盛大に勘違いされたり心配されている気がする……!!
「に、兄様、私たちは大丈夫だよ!? きちんと距離をわきまえて少しずつお互いのことを理解して……」
「ニア」
弁明しようとする私に、ユベールが声を上げた。
ハッとそちらを見ると、真剣な顔をしたユベールがいて、他のみんなも真面目な顔をしていた。
「俺たちも、ちゃんとニアとのこと、考えてるからな」
「えっ」
なんだそれキュンとするじゃないか!
いや勝手に私がいろいろと思い悩んじゃっただけであって、前世の記憶がない私だったら……きっともっとラフに考えられたんじゃないかって思うだけの話なんだよ。
さすがにそんなこと言えないからモヤモヤしただけでさあ!
「まあそれについては各々がこれから妹との時間をどう過ごすのかで証明していってもらえればと思う。勿論、陛下から了承は得ている」
「はい、皇太子殿下」
「いずれ誰が義弟になるか楽しみに……はできないが!」
「できないんだ!?」
そこは妹に対する過保護としても行き過ぎなのでは。
いや、ちゃんと兄として頑張ってくれているので自覚はあるみたいでヴェル兄様もちょっと恥ずかしそうだ。
「うむ……こほん。もう一度言っておこう。どのような関係になろうとも、今過ごす時間が全員にとって良いものになるよう、こちらとしても手を貸すつもりだ。生国と周囲の思惑に囚われず考えを広げるよう」
しかしなんだかみんながすっごい真面目な顔しちゃってるから、私いたたまれないなあ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます