第104話
ユベール。
ユベールが私の婚約者?
目をパチパチと瞬かせる私を見て、父様はとても楽しそうだ。
「今頃は魔国を出発してこちらに向かっている頃だろう」
種明かしをすると、元々ユベールは婚約者候補としてかなり前から名前が挙がっていたんだそうだ。
魔国の王子であり、この帝国で育ったユベールであれば両国の架け橋としてこれ以上ない適任者であると言われればその通りだと思う。
ただ、これまで私も手紙のやりとりで知っていたことだけれど、ユベールは魔国に行って魔力の量が増えて、それの制御訓練に時間を費やしていたはずだ。
そのせいで私が十歳の誕生日を迎え、婚約者の選定に入ったとしてもそのままユベールを迎えるには不安であると議会で判断されたのだ。
「だがあちらも諦めが悪くてな。魔国で与えられた課題を
「えええ!?」
ユベール、何やってんの!?
そういえば鳥になるのも自由自在だし今じゃ魔法も余裕だって手紙には書いてたっけ。
いやそれでも無茶苦茶だわ。
「まあそのくらいの気概があればこそニアの婿候補としては相応しいと余も認めたわけだ」
にやりと笑いながらそこでほかの候補者たちを見る父様。
どっからどう見ても悪者ですね!
(でも、ユベールに会えるんだ)
五年ぶりの再会だ。
ユベールはどう成長したんだろう?
背が伸びたのは手紙にも書いてあった。
髪の毛は魔力の制御に役立つから伸ばしてるって書いてあった。
でも、どんな風になったのかなんてわからない。
きっとそれは向こうも同じ。
「妃たちには既に通達はしてある。この場に呼ばなかったのは、それを踏まえてお前たちに余計な情報に惑わされることなく自分たちで考える時間を与えるためだ」
「!」
「候補者たちはここまでの時間で新たなる候補者が加わること、皇女の婿になるという事に対する責任を考えねばなるまい。これまで周囲の声に従わざるをえないことも多かっただろうが、いつまでもそれではこの帝国の皇族となるに相応しいとは言えぬ」
皇帝としての言葉は、子供である私たちにも容赦ない。
でも、それは正しい言葉でもあった。
私たちは子供だから、許されていた。
でも私たちが子供だからまだ甘くしてもらっているだけで、この関係は国を護るための人間を育てる一環でもあるのだという現実も突きつけられている。
ただ恋をして、愛を育むだけじゃなく。
この先、私は皇族から臣下となり領地を賜るのだろう。
そして私の夫となる人は領主か、それに準じた地位を得る。
つまるところ、民を守る盾で、矛で。
「新たなる候補者とどのように付き合っていくかは各々が答えを見出せば良い。ニアは、平等でいなければならん。わかっているな?」
「は、はい!」
ユベールは、大切な友だち。
だけど、今日この日から私の……婚約者候補。
何かが変わるんだろうか? 変わってしまうんだろうか。
ちらりと三人に視線を向けると、みんな難しい顔をしていた。
変わるのが、ちょっとだけ怖いなと。
そう思った。
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