第69話

 まあとりあえずわかったことは私の婚約者候補たちは揃いも揃って複雑な事情持ちってことだ!

 私も人のことは言えんけども。


(そりゃ問題を抱えている子を皇女の夫って立場にねじ込めたら将来安泰だもんねえ)


 私には後ろ盾らしい後ろ盾がいないけれど、父と兄からの愛されているという強みがある。

 それを考えれば、政略的な意味も含めて私という物件はとても好条件だと自分でもそう思う。


 少なくともカーシャ様は母国の価値観に基づいた善意、カトリーナ様は母国との政略的繋がり、カノン様は母国への義理立てって感じでそれぞれ自分が正しいと思っているんだろうなあ。

 厄介極まりない。


 王侯貴族の結婚は確かに家と家の繋がり、そこが大部分を占めているから周囲の思惑やパワーバランスを考えてどうのこうのってあるんだとは思うけど……私が選んでいいって父様が仰った段階で、そこまで政治的な意味合いはないんだろうと思う。多分。


(……でもあの人たちがどう思っているか、が大事だよね!)


 そう、私だって立場上ある程度政略結婚ってのは仕方ないと前々から理解して、その上で恋愛ができたらいいなと思い続けているのだ。

 そういう意味ではあの候補の彼らは三人ともカッコイイし、あとは性格が良ければ私としては関係を築いていけるのでは……?


(いや待て、彼らは確かにかっこいいけど私はどうなのさ?)


 美貌……とまでは言わないけど、可愛い系美少女。うん。そこは自意識過剰ではない程度にそうだと思う。

 なんせ兄たちが輝かしい美貌だからね、そりゃ少しは見劣りするかもしれないが間違いなく兄妹なんだから私だってかなりイケていると思う。

 

 スタイル……についてはこれからに期待だ!

 まだ少女ですから! これからこれから!!


 問題は……恋愛って何をするんだ?


(前世の感覚だと……映画行ったりお買い物したり? こっちの世界だとなんだろう、文通?)


 同じ城にいるのにか!

 というか交換日記とか前世でも滅多に聞かないわ!!


(……まあ、お茶会。そうお茶会で会話して、お互いに好きなものを探って、そっからだな)


 これからはお妃様たちの干渉も減るってことだし、ようやく会話ができるってすごいことだと改めて気合いを入れる。

 いや別に入れる必要はないんだけど。


 急いで決めろとも言われていないし、ゆっくり関係を築いていいって言われているわけだし……でも彼らは彼らでせっつかれてるのかなって思うと申し訳なくも思うのだ。


(私の都合ばっかりで考えちゃいけないよね)


 ただ、自分でも『恋愛したい』って言ってるけど実際恋愛ってしようと思ってできるものなのか?

 この人が好きだと思ったらそれが恋愛じゃないのか?


 物語の中では少なくとも気づいたら……って感じだけど現実じゃあどんな感じなのだろう。


「うーん」


「きゅーい」


 私が首を捻るとソレイユが真似して体ごと捻っている。可愛い。

 思わず抱きしめてため息を漏らすと、何を思ったのかソレイユがペロペロと私の頬を舐めてくれた。


「くすぐったいよう、ソレイユ」


「きゅー」


 モフモフとしたその手触りを撫でながら、私はうんと一つ頷いた。

 そうなのだ。

 わからないなら、聞けばいいのだ! とりあえず、手当たり次第に!!

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