第18話
さてさて、パル兄様も味方であるということはわかったのはとても喜ばしいことだけど、同時にうちの家族が相当複雑だということもわかった。
いやわかってたけど、わかっちゃいたけど私が考えていた以上に複雑極まりないな?
なんだよ隣国とか属国とか身分とかもう勘弁してよ……。
とりあえず長男次男に関しては急いで会いに行くのもどうかなと思うので、今は兄たちから得た情報を元に私はシズエ先生の授業を真面目に受けることを優先した。
理由としてはあれだ、私が幼女ということもあってあまりにも情報が少ない。
パル兄様は私がバカじゃないからと教えてくれたけどごめんね中身が同年代だったからだよ!!
とはいえ今のままではよくわかんないままにいずれかの妃からの推挙で私の嫁ぎ先が決まりそうな勢いで、それが果たして吉と出るか凶と出るかさっぱりわからないのが現状だ。
こういう時は、焦らずに知識を身につけろと前世で中学校の先生が教えてくれた。
毒親から逃げたくて、ただひたすらにどうやったら逃げるかしか考えていなかった私に先生はそう教えてくれたのだ。
『いい? 勉強をしなさい。知識があれば、それを元に道を切り開けるわ。何も知らなくては何もできないの。知っていれば行政に助けを求めることも、逃げるための道筋も、シェルターなんかも調べられるわ。知識はあなたの武器になるの』
中卒でも仕事はできるけど仕事の幅は狭まること、高卒資格は後からでも取れること。
ただ漠然と逃げることしか頭になかった私は、先生の言葉を受けてひたすらに勉強して、世間のルールを学んで、働きながら高卒資格を取ろうと必死になって……。
(まあ結局あいつらに見つかっちゃって、台無しになったけど)
きっとこの世界でも同じだ。
私は皇女だけど、何も知らない
知識を得て、知恵をつけて、味方を巻き込んで自分に有利に物事を運ばなくては!
(婚約者についてはきっと父に聞くのもだめだ。私が選ぶ立場じゃないとはわかっているけど、それでも私にとって良い方向に持っていかなくちゃ……)
おそらく放っておけば妃か、あるいは妃の派閥の誰かから父に上奏が出るのだろう。
そうなる前に私は私の価値を作り上げなければいけない。
父にとって『可愛い娘』という価値だけでは皇女としての婚約は自由にならないことくらい、私にだってわかる。
かといって父に自分の婚約者ってどうなっているのかって問うたら父のお気に入りから選ばれて、今度は父の顔色を窺う人たちとの生活になるわけだ。
(ううう……何も想像できない)
そもそも彼氏もいたことがないからな!
せめてキュンとできるような相手に出会ったり信頼できる人なんだなあとか思える程度にはお付き合いする選択権がほしいんだよ!!
まあとりあえずの目的、『兄と仲良くなること』と『ペット』に関しては今のところクリア……と言ってもいいと思うし、割と前身していると思うんだよね……。
恋愛は……まあまだ幼児だし? 美幼女なんだから将来は有望と信じてそこは、うん……変なお見合いとか断れない状況じゃないようにできる限り行動あるのみ?
とりあえずは兄たちを味方につければ変な相手のところには嫁がされないと信じたい。
後は、自立。
これこそ知識を身につけて、魔法の勉強かなあ。
(魔法の勉強なら、アル兄様とパル兄様よねえ)
私の回復系の魔法ってのがどう勉強していいのやら。
神様に祈りを捧げるとかが効果的らしいが、神に祈るよりも先にすることがあるんじゃないのかってタイプの私からするともっとこう……他の方法を知りたいのだ。
とりあえずは回復系だからパル兄様としては分野外だろうか?
ならまずはアル兄様に相談してみてもいいかもしれない。
「そうだ。シエル、今度アル兄様に会う時にはシエルも一緒に行こうね」
「ほーう?」
「前にアル兄様のところに行った時シエルご機嫌ななめだったもん。一緒に行けば安心だよ」
「ほーう……」
「えっなにその重低音」
お前そんな声も出るの!?
そしてそれはどういう感情なんだ。
むむむ、フクロウって難しいなあ……。
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