第14話
さて、アル兄様との初対面は大成功に終わった。
すっかり打ち解けた我々は仲良し兄妹と言って問題なかろう!
若干、戻った時にシエルから冷たい目で見られたんだけど……なんなの? 浮気を咎める彼氏ムーブなの?
おかしいなあ、兄だけど獣人族だから匂いがとかそういうのあるのかなあ。
フクロウって嗅覚は鋭くないはずなんだけど……動物と獣人族で違うとかあるのかな?
「ねえ、テト、どうなのかな」
「どうですかねえ、でもそれだとアタシたちの騎獣って割とパートナーに一途で嫉妬深いですけど、他の騎士たちと飲みに行った翌日でも気にした感じしないですけどねえ。フクロウってそもそも懐かないですし。まあある程度は仲間として認識はするので……」
「そうなの?」
そういやそんなこと前世でも聞いたことあったかも。
フクロウは主従っていうよりは仲間みたいな感じでほどよい距離感と遠慮のなさがあるとかなんとかかんとか。
ふーむ、じゃあシエルは私のことをある程度認めてはいるけどもしかして犬っぽい匂いとか気配が嫌いなのかな?
(ああ、出会った時も何かから逃げていたみたいだし……猟犬に追われたとかそういうことなのかなあ)
だとしたら、今度シエルのことを連れてアル兄様のところに行ってもいいかもしれない。
私から感じる気配が犬じゃなくてここにいる騎士たちと同じ獣人だって理解すれば、怒らないかも。
シエルは賢いからね! きっとわかって……わかってくれなかったらどうしようかな。
(いいか、それはその時考えれば)
アル兄様とは定期的にお茶をする約束を取り付けた。
私の部屋にある便利な魔道具も、実はアル兄様が
ドライヤーとか、温かくなる毛布とか、明かりの調節できるランプ(音楽も鳴る)とか!
えっ、アル兄様超有能。
これまではそこまで細かい調整の必要な魔道具は需要も無いし開発されてこなかったんだって。
他にも弟がいるのになんで? って思ったらそれについてはシズエ先生が教えてくれた。
なんと、不思議なことではあるのだがこの世界では女性は魔力に弱いというのだ。
魔女とか、騎士たちで魔法を使うとか、そういうことはあるものの、成長に影響が出たり妊婦さんが異常に苦しんだりする場合は大抵魔力が何かしら噛み合っていないのだってさ。
五歳まで云々も魔力だったし、特に女の子は危ぶまれることが多いんだって!
ハードモード!
そりゃお父様も大望の女児って理由だけじゃなく溺愛するよね!!
(ん? ってことはあれか? 私の持つ魔力は弱いから影響も少なかったってことか?)
チートなくて良かったねパターンかこれ。
いやでもこれからの人生においてチートがほしいんですけど。
獣人騎士たちからは何故か人気だけど。そういうんじゃないのよ。
彼らはどうもちっちゃいものや子供が好きな性質らしく、ちょうど私が可愛い盛りってことで庇護対象としてとても大事にしてくれているみたいなんだよね。
まあ嫌われるよりはいいのでありがたいんだけども。
「それで? どうなさるんです?」
「……うーん」
そこには二通の招待状。
一つは、第六皇子カルカラ=ゼノン兄様からお茶会のお誘い。
そしてもう一つは、なんと先日嵐のように去って行ったパル=メラ兄様からのものであった。
(これはどっちから行くべきかなあ)
アル兄様から聞いた兄たち情報によると、長男ヴェルジエット=ライナス兄様は私たち下の弟妹に対しては庇護すべき存在と見ているそうだ。
若干父親目線のような気もすると苦笑していた。
次男のオルクス=オーランド兄様はそこまで弟妹に興味はないものの、話しかけられたらきちんと丁寧に対応してくれる人とのこと。
五男のシアニル=ハーフィズ兄様は掴み所がなくて自由人。
で、六男のカルカラ=ゼノン兄様は明るくて元気とのこと。
アル兄様に言わせれば『みんなちょっとクセが強いけど、いい人たちだよ』とのことだった。
そういうフォローを入れるアル兄様がいい人なんだよ……。
「まずはカルカラ=ゼノン兄様にお会いしようかな。パル=メラ兄様にはその後。デリア、お父様とのお約束の日とは被ってないよね?」
「はい。お二方とも招待の日付は複数候補を挙げてくださっていますが、いずれも陛下や家庭教師の都合とはずれています」
「……気を遣ってくれたのかな?」
パル=メラ兄様に関しては嫌われたものとばかり思っていたけど、違うのだろうか。
私は小首を傾げつつ、最短で二人に会える日を選択してたどたどしくながらも自筆で二人にお手紙を書いたのだった。
********************************************************************************
次は18時更新です
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます