拝啓、明日死ぬ僕と明日生まれる君へ

琥珀とう

第1話 プロローグ

 15歳の11月3日。世間の同い年の学生は進路の事で悩む時期だろう。

 しかし、学校もろくに通えていない僕にとってはそんなことはどうでもよかった。

 時計は午前3時。おばあちゃん家からこっそり抜け出して、真っ暗な夜道には街灯がぼんやりと光っていた。勿論こんな時間に人なんて僕以外いない。

 こんな時間に家を抜け出すなんていつぶりだろうか。そんなことを考えながらペタペタとコンクリートの道路を裸足で歩く。冬というのもあり地面は氷のように冷たかった。でも、そんなことはもう気にならない。そのくらい僕の心は、感覚は、感情は

…狂っていたから。

 あの日の建物を見つけ、ボロボロになったその4階建ての廃墟の病院の扉を開ける。そこは幽霊が出ると噂の廃墟でこんな時間に行くなんて普段の…いや、7年前の僕なら絶対にしないし出来なかっただろう。

 でも、もうそういうのも気にするのが億劫でどうでもよかった。

もう何も考えたくない。

抱えたくない。

苦しみたくない。

 階段をのそのそと上がり、屋上のドアを開ける。

そこにはあの時に見た大きくて丸い月があった。

「…ごめん。七緒。」

「あの時の約束守れそうにない。…もう限界なんだ。」

「七緒…は、いつ生まれてくるんだろうね。明日かな。

僕の代わりに君が生きてくれたらもう、それでいいんだ。」

 これで最後なんだと、屋上の端っこに足をそろえる。

目をつぶり大きく深呼吸をして…

一歩足を前に出した。そこには勿論、地面は無かった。

体がぐらつき両足が地面から離れる。そのまま

重力とともに僕の身体は真っ逆さまに落ちていった。


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