魔法耐性
少女、もとい
この魔法国家全体が保有する魔力量を示す
とはいえ、どの程度の魔力量があるのか気にはなる。保有している魔道具では、計測出来なかったけれど、計測に用いる魔導具の性能が良ければ、計測出来る可能性がある。
様々な魔導具を入手しては試行してみた。しかし、結果は変わらず――
とはいえ、どうしても腑に落ちない点がある。本来、土地が有する魔力量が大きいほど、周辺に生息するモンスターは強い。厳密には、強い魔力に長時間あてられることにより、強力になる。けれど、周辺には叩くだけで消滅する程度の、弱いモンスターしか存在しなかった。
表向きは、魔法学校の生徒や冒険者が安全に修行出来るようにということになっている。
おそらく――推測の域を出ないけれど、この国の土地自体が持つ魔力量は少なく、総魔力量は、個人の魔力量に依存している。
しかし個人が一箇所に永続的に滞留することはなく、流動している。そのため、周辺に影響を及ぼせるだけの安定性が無いことが、弱いモンスターしか存在しない原因だと
となると、魔法国家とは名ばかりで、魔力量が多い原因は、優秀な魔法士が多く集まっているためということになる。
来訪の目的は、魔力そのものを求めているわけではなく、特に優れた魔法士の協力を得ること。膨大な魔力の根源が魔法士であることが明らかになったことは、むしろ好都合。
魔法国家に来て数日。それなりの魔力量を有する魔法士は多く居た。けれど、特筆する程優れているわけではない。その程度であれば、魔王城周辺のモンスターの方が、強い魔力を有している。
期待外れ――魔道具を片付け、撤収しようとした際、近くを通りかかった少女を誤って計測してしまった。
魔道具が示した
この現象は、たった一人の少女、もとい魔力袋が、魔法国家全体が保有する魔力量相当の魔力を有していることを示す。とんでもないことだ。この魔法国家の魔力量が、計測出来ないほど大きい理由は、魔力袋が居ることが一因だと認識を改めた。
この日から、俺は魔力袋を観察し始める。
観察しているうち、魔力袋の両親は、魔力袋が冒険者になることを望んでいると知る。
魔力が高い人や場所は、魔力感知スキルを習得している者であればわかる。誰でも習得可能なスキルであることもあり、魔力袋が優秀な魔法士になる資質を有していると、漠然と認識している者は多い。そして期待もされている。
膨大な魔力を保有しているのだから、
ただ、現状は、あくまで優秀な冒険者になる可能性に期待されているだけ。
魔力袋は唯一無二の存在。しかし、魔力袋が一般的な村人としての生活を送っている状況から察すると、未だ魔力袋の特性を正確に認識している者は居ないことが伺える。
俺は魔導具を用い、人や物の魔力量を計測することが出来る。しかし、一般的な冒険者は
社会のルールでは、そういうことになっている。
俺は、魔力袋について仮設を立てた。
魔力袋は自身に対する全ての魔法を無効化出来る。
仮にそうだとすれば、彼女とパーティを組むことで、メンバー全員がその恩恵を得られる可能性が浮上する。
魔力袋は、膨大な魔力を有しているだけでも十分過ぎる程の価値がある。しかし、この仮説が正しければ魔力袋の価値は格段にはね上がる。
魔力袋の両親がオークションに関心を持つよう促した。そして無事、出品手続きが済んだ。
事前情報の無い魔力袋は、もっさりとしている単なる
入札者が想定している使途は、
それなりに風貌が整っている少女には、高値が付く。このために多くの借金を――先行投資をした。『程度』なんて表現は適切ではない。返済し終えるまでに軽く十年は掛かるだろう金額。
しかし、そんなことは些細な問題。魔力量が高い子どもが産まれれば、オークションに出してすぐに元を取れる。出産促進剤を飲ませ、沢山産ませれば、何人か当たりが出るだろう――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。