40.「忘れた頃に現れる女」

 ……とまあ、レイラの恨みに関しては、なかなか真っ当な理由が存在している。


 その後、エドマンドが再びイーモンの説得に出向き、庭に立つレイラの姿を目撃する。

 声をかけようと庭に出たところ、レイラは何も語らず、数を数えながら静かに後ずさり──13を数えたところで、エドマンドが例の井戸に辿り着いた、と。


 怨霊となったレイラ……「死を数える貴婦人」は、その後もたびたび姿を現した。

 イーモンに濡れ衣を着せられたエドマンドが復讐鬼と化し、イーモンの前に現れた時も。

 近隣の領地との戦が始まり、主要なとりでが攻め落とされた時も。

 亡命中のイーモンが、を遂げる瞬間も……


 彼女は何も語らず、数だけを数えて破滅を見届けた。……イーモンの死後も、領地が滅びても、時代が変わっても、何十年、何百年と、「怪異」として在り続けた。


 レイラはイーモンを恨んではいるが、それ以上に愛する人を追い詰めた自分自身を恨んだのだと思う。

 だから、何も語らなくなった。

 けれど、破滅の運命に想いが、彼女を「怪異」たらしめた。


 ……とても、悲しい物語。


 それでも、レイラは一緒にアイドルになろうって言ってくれた。つらい経験が彼女を「怪異」にしてしまったけれど、本当は優しくていい子なんだ。

 ……きっと、寄り添えるはず。


 なんて、思いながら彼女を探していたんだけど……


「ひゃひゃひゃひゃひゃ!!! どうだー! 高速階段昇り降りブリッジ走行~!!」

「──、────……」

「でしょでしょー! アタシったら天才だよね!」

「──……!」


 階段の踊り場にて、おろおろと立ち尽くすレイラちゃん。アーンド、ブリッジ走りのまま高速で階段を昇り降りするリナ。

 ……あ、そうだ。

 すっかり忘れてたけど、協力者、リナもいるじゃん……。

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