レディ・ナイトメアの奮闘 ~生首大好き令嬢に転生してしまったけど救いのない世界は嫌なので、呪われた館をリフォームします~

譚月遊生季

1.「転生って……もう死んでますけど!?」

「……あれ?」


 少女は気が付くと、見知らぬ森の中にいた。


「こ、ここは、どこ……?」


 前後の記憶が曖昧で、自分がいつから、なぜ、何があってここに居るのか、彼女にはさっぱり分からない。


「……あ。あれは……」


 鬱蒼と生い茂る森の中、彼女は見つける。……いいや、見つけてしまう。

「その館」を──




 そこで、少女が古びた館を見つけるアニメーションが挿入されたことを覚えている。

 大きく浮かび上がる「ホーンテッド・ナイトメア」のタイトル。始まる乙女ゲーム風のOPアニメーション……


 ……思い出した。ここは、ゲームの世界だ。


 傍らに座る、首に継ぎ目のある男。

 壁際に立った騎士は赤く染まった目をかっぴらいたまま、血の涙を流し続けている。

 半透明のおじさんが物悲しいピアノ曲を奏で、その隣では、椅子に座った貴婦人が床を見つめて何事かブツブツと呟いている。

 全身焼けただれた青年が雷鳴とどろく窓の外を眺め、けたたましい笑い声が聞こえたかと思ったら、ブリッジをした女が廊下を高速で駆け抜けて行った。


 そう。ここはかつて私が好きだったゲームの世界。

 何がきっかけかは分からないけれど、わたしは唐突に「前世の記憶」とやらを思い出してしまった。


 っていうか、あの……わたし、もしかしなくても……


 テーブルの上の鏡を見る。ピンク色の髪、緑色のリボン、黒いドレス、血の気の失せた肌、見開かれた瞳孔……

 ハイライトのない瞳と裂けた口からは、謎の黒い液体がポタポタと滴り落ちている。


 今世、既に死後なんですけどー!?

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