【KAC20236】ある男の話

大月クマ

平成7年7月7日の男

「――では貴方の誕生日は?」


「平成7年7月7日です」


「七夕で、7が揃って……これはラッキーセブンって、いうのでしたかね」


「まあ一般に、数字の7はラッキーだというますね。ですが、私にとっては不幸の数字ですよ」


幸運ラッキーではなく、不幸アンラッキーだと?」


「そうです。どうせスーリーセブンなんて、パチンコなんか大当たりとかで決まったことでしょ? 私なんて1度だってパチンコで当たったことがありません」


「パチンコはおやりに?」


「いえ……18歳になったときに、一回試したら、大損しましたのでそれっきりで――」


「それが原因じゃないですか?」


「なにか?」


「確率の問題では……まあいいでしょう」


「7歳の時に、彼女が出来たのですが――」


「あら、お早い」


「すぐに遠くに引っ越してしまって、それからメールとかインターネットで交流していたのです」


「遠距離恋愛ですか。そのお歳から」


「それか列車で7時間も掛かるような場所で。はじめていたときは、家出したと思われて捜索願いが――ちゃんと言って出てきたのに、それはもう大変でした」


「まあ、おいくつの時か分かりませんが、それはそうでしょう」


「それから夏休みになると、貯めたお年玉を使って行ったのですが……14歳の時の時に別れました」


「えっと、付き合ったのが7歳で、別れたのが14歳で――」


「7年目ですね。彼女が――」


「浮気ですか? いい加減、遠距離恋愛にあきたとか……」


「いえ、更に遠い場所に――」


「おお……失礼しまた。お気の毒に――」


「いえ、海外に親の都合で行ってしまい。今度は飛行機で7時間も掛かる場所で」


「ああ、時間的に7という数字が嫌いなだけですか」


「いえいえ、出席番号も7番で、誕生日も7が並ぶからと、いじめられたものです」


「それはお気の毒に――」


「列車とかの指定席に座ると、だいたい7番。それに隣が、音楽をただ漏れか、乗り物酔いに苦しんでいるか――」


「お気の毒に――」


「限定品を買いに行くと、だいたい7番目。でもって私の前で無くなる」


「お気の毒に――」


「結婚できたのは、早かったのですが――」


「おいくつで?」


「28です。7×4の――」


「あッ、ああぁ……丁度、ご命日でしたね。失礼しました」


「昔のエラい人が、結婚を地獄の始まりと、言ったようですが。私の場合は――」


「そうですねぇ。残念ながら、今、黄泉の入り口にいます。

 これから裁判をしてもらいますから、その判決により天国に行くか、地獄に行くか――」


「どこで決まるのです?」


「四十九日の太山王様のところですね」


「49。7×7……また、7が付きまとう――」



〈了〉      

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20236】ある男の話 大月クマ @smurakam1978

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ