だるい

「シスナ、総統に恥ずかしいと思わないのか」


スターハルディン・ジークライア先生はあたしを眼鏡のレンズの向こうから鋭く睨んでいた。


生活指導室。狭く陰気な部屋に、とうとうあたしは呼び出されていた。


「どうして、剣技の授業をサボる? 愛国者としての、自覚がないってことだぞ」


あたしは、適当に聞いていた。言えることはあった。それを言葉にしたら、大人は正論を言うから、嫌だ。


「お前……、そこそこできるだろう?」


あたしは、先生の目を睨み返した。先の戦争で、帝国の要と言われたヴァルキュリア騎士団。それの切込隊長をしていたという、女騎士。彼女の目の奥には、深い冷静さがあった。


「みんなお前を軽蔑しているぞ。それでいいのか?」


それでよかった。いまさらクラスのヒエラルキーをガチャガチャしたくなかった。4級市民は静かに生きる。


「このまま、高校を卒業して、どうする」


4級市民にできることは限られている。出世のない兵士になるか、一日中、工場で働くか。その現実を知らない先生でもないだろうに。教師というのは、夢とか希望とか、語らなくてはいけないのだろうか? ろくに手助けもしないくせに。


部屋のドアがノックされた。


「入れ」


現れたのは、金髪の美しい髪の毛を軽い感じで伸ばした美しい少女。


エリカ・フォン・シュタットハーデン。学科も剣技も主席な神童と言われてる生徒だ。


「スターニャ先生」


エリカは先生を愛称で呼んだ。


「ん、プリントか。そこに置いておいてくれ」


スターハルディンは、部屋の隅にある事務机を指差す。


「そうだ、エリカ。時間は空いているか?」


「え? あ、はい。今日は習い事もありませんので」


エリカは机の上でプリントを整えて、置いた。


「よし。シスナ、来い」


エリカを相手に剣技を披露させるつもりか?


あたしは、憤然として先生を見た。相手は「立て」と言った。あたしは、立ち上がり、2人はドアを出て、右に曲がる。


あたしは左へと曲がった。


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