第3話 ゴブリンに挑む決意

 あれから、かなりの時間ダンジョン内を探索してみたが、ゴブリンより弱そうな魔物を見つけることはできなかった。


 むしろ、見つかるのはもっと強そうな魔物ばかり。

 でかいゴブリンとか色違いオークとかトロールとか。見るだけで震えてくるような魔物ばっかり見つかるんだから嫌になっちゃうよね。


 このエリアで弱そうな魔物が見つからないなら、いっそ階段を下るという手も考えた。だけど、俺の知る洞窟型ダンジョンって下に潜れば潜るほど敵が強くなるというのが定石なんだよな。


 それを確かめるためだけにあの階段をまた探し出すというのは結構な手間だ。もし行ってみたとして、このエリアよりもっとやばそうだったら嫌だしなぁ……。


(羽が疲れてきたな……一旦休憩するか。)


 天井にくぼみを見つけたので足の鉤爪のような部位をそこに引っ掛け、天井にぶら下がって休憩する。


 コウモリってなんで逆さまで寝るんだろうと疑問に思っていたのだが、やってみるとこれが意外に楽なんだよな。足と上半身がピンっと固定され、力を使わなくてもぶら下がることができるのだ。地上に寝るのと比べて敵に見つかる確率も下がるし、結構いいよな。


(あーお腹すいた)


 散々飛び回ってエネルギーを消費したのか、体がだるくなってきた。


 空腹感ももちろんあるんだけど、それ以上に喉が渇いたような気がする。ご飯探さなきゃいけないけど、水場も見つけなきゃな。


(やばいな……あとどれくらい待つんだろ)


 体の内側から、強い飢えを感じる。1日3食を困ることなく食べられていた前世では、感じたことがないような強い飢え。


 前世でも腹が減ってひもじい思いをした経験はもちろんある。しかし、今の状況はそれとは根本的に違う。時間になれば母が飯を作ってくれるわけでもないし、少し外を出歩けば食料を買えるような状況でもない。


 焦燥が、精神的な飢餓をより一層強くした。


 このままじっとしていてもエネルギーは消費されていく。食料が見つからなければどんどん衰弱していくだろう。


(なら、いっそのこと元気なうちにゴブリンに挑んでみよう)


 魔物になってしまったものの、これも立派な2度目の人生だ。餓死するなんて勿体なさすぎる。餓死よりは戦死の方が諦めもつくだろう。


 それに、超音波のように他のスキルも優秀かもしれない。体格差は確かにあるが、空というアドバンテージを活かせば勝てる可能性はゼロじゃない。


 そうと決まれば即行動だ。十分羽は休まった。


 天井から飛び降り、孤立しているゴブリンを探すために飛び立った。


 

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