There, it goes on.

 一面の荒野。

 ただ、荒れた岩と砂の世界。

 その上には馬鹿らしい程に青い空が広がり、段々と赤くなる。


 一筋の砂埃。

 その根元には1台の蒸気車両が行く。

 蒸気機関が上げる機械音と、軋むサスペンション。

 夕陽に変わりゆく太陽に向かい、段々とその影を伸ばしていく。


「ねぇ?あなたに付いて行っていい?ウルフギャングさん?」

 蒸気車両を運転するウルフギャングに女が絡み付きながら訊く。


「次の街までだ」

 無精髭の男、ウルフギャングはそう応える。

「無理よ。貴方は私の『帰る所』、全部こわしちゃったんだもの」

 女はウルフギャングの応えを気にせず、気ままに続ける。

「私も、行くアテも無くなっちゃし、もうあんな商売するのもイヤだし、ちゃんと責任とってよね?」

「弁済はしているはずだ」

 2人とも、互いの話に構わない。

「それでね、私の名前もソフィアってゆーの」

 女、ソフィアも構わず、そのまま続ける。

 ウルフギャングの目が曇る。

「どうせアテも無いなら、このまま2人でどっか行っちゃおうよ?ね?」

 ソフィアの提案を前に、ウルフギャングは黙る。


 蒸気機関の音。

 軋むピストン。

 吹き出す蒸気。

 回るメーター。


 沈黙。


「墓参りが済んだら……考えよう……」

 ウルフギャングはそう呟く。


 かつての「帰る所」に背を向け、その蒸気車両は進んで行く。

 陽に向かい、黒く、長い影を伸ばして。

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