Bet for the 7

@Pz5

Here, it come.

 一面の荒野。

 ただ、荒れた岩と砂の世界。

 その上には馬鹿らしい程に青い空が広がり、段々と赤くなる。


 一筋の砂埃。

 その根元には1台の蒸気車両スチームキャリッジが行く。

 蒸気機関が上げる機械音と、軋むサスペンション。

 夕陽に変わりゆく太陽を背に、段々とその影を伸ばしていく。


 一つの町。

 その機械が伸ばす影の先、岩山に囲まれている。

 教会も裁判所も無く、大陸横断鉄道からも離れた、文明の血流不良の先にある町。

 うっ血した四肢が腐るように、その町もまた腐っていた。

 否、文明社会からはみ出た毒や老廃物が自らそこに集まっていた。


 ゴールドラッシュの一環千金に夢破れた者。

 怪しげな薬を売り、ここを根城にする者。

 内戦で帰る場所を失い、放浪する者。

 博打にハマり、身を持ち崩した者。

 売春宿の主人と揉め流れ着いた者。

 暴力以外を知らず、町を出た者。

 解放されたが自由に困った者。

 鉱山で片腕を四肢を欠いた者。

 連続強盗犯。

 薬物中毒者。


 様々な者が文明に馴染めず、気が付いたらこの町に流れ着いた。

 懸賞金をかけられた者も多い。


 そんな、風に吹かれた者達を塞き止めるように、荒野に屹立する岩の根元に町は自然とできた。


 そして、そんな町に向かい、その蒸気車両は進んで行く。

 陽に背を向け、黒く、長い影を伸ばして。

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