第22話 夏休みの予定
六月に一作目の投稿を終えてからは、主に『活動』をしながら次の小説の案を練る。一作目は『異世界ファンタジー』で挑戦したけれどそこは詩織さんの言う通りレッドオーシャンで、上位にいる作品の評価数になんて到底及ばない。詩織さんや課長曰くプロや他の投稿サイトで高評価な人でもない限り、あんな評価数を稼ぐことは無理だそうだ。
因みに五月にカクヨムコン8の結果発表があったけど、課長の作品はダメだったそう。こればかりは作品を選択する編集者の人々の好みに左右されるので、今回はご縁がなかったのだろうと課長が言っていた。神様だったら『ご縁』を作ることは簡単だと思うんだけど、それをすると面白くないと課長自身も言ってたっけ。
課長がカクヨムコン向けで書いていたのは『ライト文芸』ジャンルながら『恋愛(ラブロマンス)』寄りな感じ。気になって『ライト文芸』とか『恋愛』ジャンルの他の小説も読んでみたけど、話の進め方は『異世界ファンタジー』と違っていたし、タイトルも長いもだけではない。どうやら『異世界ファンタジー』、『現代ファンタジー』と『ライト文芸』、『恋愛』では読者層が若干違っている感じ。あくまで個人的な印象だけど、『ラブコメ』はファンタジー寄りで、『ライト文芸』は色々入り混じったカオスな感じがした。時々驚くほど長いタイトルのもあったけど、僕はもうその時点でパスしちゃってたなあ。と、いうことは長ければ長いほど良いと言うわけでもないのか。
「二作目のジャンルは考えた方が良さそうだなあ」
「そうじゃな。異世界ファンタジーは作品が埋もれてしまう可能性が高いからのう。カクヨムコン8の読者選考実績から言えば、ライト文芸やホラーの通過率が高いな」
「ホラーか……僕には書けそうにないなあ。もう七月だし、二作目の設定を考えないと」
「うむ。八月は夏休みがあるのではないか? 時間的には余裕がありそうじゃな」
「あっ! そうだ!」
夏休みで思い出した! ゴールデンウィークは小説を書いててどこにも行かなかったし実家にも帰らなかったけど、『たまには帰ってこい』と母さんから催促があったんだ。
「僕、夏休みは実家に帰省しますけど、詩織さんはどうされますか? この部屋にいてもらってもいいですし、その間だけ課長にお世話になるのもアリですけど」
「何を言っておる、私も帰省する」
「え? 天界に帰るんですか?」
「お主と一緒に実家に帰省すると言っておるのじゃ」
あー、そう言うことですか。いや、しかし! 『こちら神様です』なんてじいちゃんに紹介したら卒倒しますよ!
「さ、流石に『神様です』とは紹介できませんよ!」
「よいよい、恋人とでも言っておけ」
いや、それはそれで問題が……実家に彼女を連れて帰って実家に泊まってもらうって、もうそれは結婚前提のお付き合いなのでは!?
「なんじゃ、恋人と紹介するのが嫌なのか? 人の体を弄んでおいて」
「も、弄んでませんし、同意の上だったじゃないですか!」
「アハハハ、冗談じゃ。上手くお主に話を合わせてやるから心配するでない」
「お願いします……」
若干の不安はあるものの、結局一緒に帰省することに。僕の実家は今住んる場所から結構離れている。電車で帰ると五時間以上かかるけれど、幸い飛行機が使えるのであっという間だ。詩織さんに『飛行機で帰る』と伝えると、テンションが上っていた。どうやら初めて乗るらしい。
会社では課長に一応報告しておく。詩織さんが一緒に帰省することは特に問題ないらしい。ついでに一件仕事を頼まれた。
「ちょうどその地方の支社と現地で打ち合わせする予定だったのよ。簡単な打ち合わせだから、行ってきてくれる? お休みのところ申し訳ないんだけど」
「いえ。それぐらいなら全然大丈夫です。実家からも近いみたいなので」
ウチの実家は空港から車で三十分ほど。その途中に支社があるので、帰りに寄ってみることにした。詩織さんはよほど旅行が楽しみなのか、かなり前から準備を進めている。遠出に際してやっぱり『スマホも欲しい』と言い出したので、僕が以前使っていた物にSIMカードを入れて渡す。以前使っていたと言ってもまだOS更新もされているし、十分使えるはず。SIMは僕と通信量を共有する様にして、電話番号だけ割り振り。これなら安く抑えられるしね。まあ、月々三十万円は預かっているから、そっちから出しても良かったんだけど。
僕の方は小説の設定……以前にどういう話にするかを考えつつ、休日は詩織さんとショッピングに行ったりテーマパークに遊びに行ったりしている内に、あっと言う間に夏休みがやってきた。
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