7を避けて
夏目碧央
第1話 良く当たる占い
糸村洋子はスーパーで働く25歳。特別信心深い訳ではないが、友達に勧められた占いアプリを何となく毎朝見ている。今日のラッキーアイテムやラッキーカラーなどが書いてあると、ちょっと身につけて出かける程度には信じていた。
ある日、SNSで話題になった占いアプリがあった。生年月日と名前を登録すると、毎日占ってくれるというもの。普段は星座占いなどのざっくりとした占いばかり見ていたので、洋子は興味を持った。その占いはよく当たると評判で、洋子も早速スマホにダウンロードした。
「誕生日だけでなく、生まれ年も名前も入力するんだから、かなり私に特化した占いよね。」
洋子はワクワクして占いの結果を待った。すると、
「本日のアンラッキーナンバー:7」
と出た。ラッキーナンバーならば良く見かけるが、アンラッキーナンバーとある。7という数字を避ければいいのだろうか。
さほど深く考えず、洋子は家を出た。職場は遅番なので昼からだった。その前に早めのお昼ご飯を買おうと、デパ地下へ寄った。いつも買うお弁当屋さんへやってきた。豪華で安い洋風の弁当は、いつもお昼前から行列が出来る。今日も何人も並んでいた。
(あーあ、今日は混んでるな。何人並んでるんだろ。)
洋子は並んでいる人の数を数えた。6人だった。自分が並ぶと7人目になる。洋子の脳裏には今朝の占いの結果が浮かんだ。アンラッキーナンバー。7は避けた方がいいだろうか。
並ぶのを躊躇していたら、もう一人並んだ。洋子はホッとして、その次に並んだ。列は動き、少しずつ前へ進んでいった。すると、パタパタパタと足音が聞こえてきた。小さい子供の足音だ。子供が後ろから走ってくる。と、洋子の少し前で転んだ。その拍子に、手に持っていたアイスリームが手から離れた。コーンの上に丸いバニラアイスが乗っかっていたそのアイスは、洋子の前に並んでいた女性のスカートに、ベッタリとくっついた。
「あ。」
洋子は思わず声が出た。
「ちょ、ちょっと!やだ、何これ!」
前の女性が悲鳴を上げる。
(嘘でしょ・・・もし7番目に並んでいたら、私の服にアイスが?)
あの占いが当たっているのか、いや、偶然か。とにかく洋子は自分が被害に遭わずに済んでホッとした。
スーパーでの勤務が始まった。いつも通りに棚出しなどをしていた。
「糸村さん、レジ入ってー。」
「はい。」
レジの番が回ってきた。レジは9つあった。そのうちの3つが交代である。レジは1番レジ、4番レジ、7番レジが空いたところだった。洋子は何となく、7番レジは避けたいと思い、4番レジに入った。
しばらくレジ打ちをしていると、急に怒声が聞こえてきた。
「なんだよ!俺は客だぞ!」
「すみません!」
「この店はなってねーなー。おい、これタダにしろ。」
「それは、あの。」
「客に向かってたてつく気か、コラ!」
怖いおじさんが、レジで店員にいちゃもんを付けていた。洋子がそちらへ目をやると、何と7番レジの客だった。
(よかったー、7番レジに入らなくて。)
そう思ってから、ハッとした。これって、占い通りじゃないのか!
すっかり占いを信じた洋子は、ウキウキして家に帰った。すると、恋人の七尾から電話が掛かってきた。着信画面を見た時、洋子は妙に引っかかった。そうだ、「七尾」という名前。「七」が入っている。今日は彼に会わない方がいいという事ではないのか。
「もしもし。」
「洋子?今日会えるだろ?」
「あー、ごめん。今日ちょっと体調悪くて。」
洋子は断ってしまった。七尾は何故か毎週火曜日にだけ連絡してくる。他の日には会えないそうだ。仕事だと言うが、本当かどうか分からない。どうせ洋子が仕事なので、夜にしか会えないのだ。
七尾とはつき合って2ヶ月しか経っていない。バーでナンパされて、すごく優しい言葉をかけて来るから、何となくつき合ってしまったが、七尾のプライベートは謎に包まれていた。
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