お祝い⑴


※36話以降の話(微?ネタバレあり)



 たまたま撮影現場の近くに、有名なケーキ屋があった。時間がギリギリだったのと、ケーキが人気過ぎて一つしか買えなかったが、まぁしょうがない。


「いすず、喜んでくれるかな?」


 今日はいすずがアイドルデビューして、5周年の日。なにかお祝いをしてあげようと思い、ケーキを買いに行ったのだ。


「ただいま」

「おかえりなさい! お兄ちゃん」


 家に帰るといすずがいつものように、玄関で出迎えてくれた。


 俺はそれを嬉しく思いながら、持っていたケーキの箱をいすずに渡した。


「いすず、これ」

「? ん? 何、これ?」

「あぁ、これはお祝いだ」

「えっ?」

「いすずがアイドルデビューして5周年のお祝いだ。有名なモンブランケーキ屋さんで買ってきたんだ。いすず、モンブラン好きだろ?」


 いすずは初めぽかーんとした顔をしていたけど、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「嬉しい! お兄ちゃん私のデビュー日を知っていてくれたんだね!」

「当然だろ! いすずは、妹なんだからな」


 そういうと、なぜかいすずは頬を膨らませた。


「むぅー、妹って言われると釈然としないけど……嬉しいから許してあげる」

「何をぶつぶついってるんだ?」

「と、とにかく嬉しいってことなの! ありがとう」


 いすずはちょっと強引にケーキの箱を奪うと、プイッと顔を背けた。ツンデレかってツッコもうと思ったけど、怒られそうなのでやめておいた。


「ふんふふーん♪ まぁ、お兄ちゃんがせっかく買ってきてくれたから、夕飯後に食べよう」

「(嬉しいんだろうな。態度に出てる)」


 本人は表情を隠しているつもりかもしれないけど、嬉しいって気持ちが溢れ出ていた。


 買ってきてよかったなって、素直に思った。


「お兄ちゃんニヤけてるけど、どうしたの?」

「いや、いすずが喜んでくれて嬉しいなって思ってさ」

「うっ」

「いすず、どうしたんだ?」

「(ストレート過ぎて恥ずかしいんだけど!?)」



 

⑵につづく

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