第21話 ファミレスでのひと時
「ありがとうございました!」
ショーの進行をしていたお姉さんの声で我に返る。どうやら、ショーは終わったみたいだ。 お客さんの顔からして、成功したらしい。
俺はこっそり誰にもバレないように息を吐いた。
「(よかったー、失敗しなくて)」
あいさつも終わり、テントに入ると、めちゃくちゃ褒められた。
「すごいね! 君! めちゃくちゃ演技上手かったよ!!」
「あは、は、ありがとうございます」
「なんか、演技とかやってたの?」
「はい、昔にちょろっと演技をやっていて……」
「そうなんだ! ねぇねぇ、このままうちでアルバイトしない!」
目をキラキラさせながら、スタッフさんはそう言ってくれた。けど、難しい。
「えっと、学業が忙しくて難しいです」
「そっか」
実際学業が忙しかったので、お断りした。めちゃくちゃ残念がられたけどな。
「残念だけど、しょうがないね。あっそうだ! ちょっと待ってて!」
「はい?」
スタッフさんは一旦奥にひっこみと、何かを持って戻ってきた。
「はい、これ。今日のバイト代、本当にありがとうね!」
俺はバイト代を受け取ると、テントから出た。テントから出ると、そこには委員長がいた。
「日ノ出くん、お疲れさま」
「ありがとう、委員長」
「ふふ、すごく演技上手かったね! わ、私感動しちゃった!」
「あ、はは」
委員長と話をしていると、スタッフさんがテントから顔を覗かせた。
「彼女ちゃんごめんね! 彼氏とのデート邪魔しちゃって」
「かっ彼女!?」
「あっ俺たち、友だちです」
「そ、そそそうです!」
「あはは、そうだったのね! 勘違いしちゃってごめんなさい! それじゃあね、本当に今日はありがとう!」
「慌ただしい人だったな」
「そ、そうだね」
「あれ? 委員長」
ふと隣にいる委員長を見ると、顔が真っ赤に染まっていた。
「委員長、顔が赤いけど熱でもあるのか?」
「だ、だだ大丈夫だよ! ただ、ショーの熱気に当てられちゃっただけだから!!」
「そうか?」
「そっそれより日ノ出くん、このあと暇かな? 良ければファミレスでお昼ご飯食べない?」
委員長にそう言われると、お腹がくぅーっとなるのを感じた。
「(演技をしたらお腹すいちゃったな)」
「あぁ、俺お腹すいちゃったみたいで……行こうか」
「うん!」
こうして、俺と委員長は近くにあるファミレスに行くことになったのだ。
「あの2人、次どこ行くんだろう」
「んっ?」
「どうしたの? 日ノ出くん」
「いや、なんか視線を感じたんだけど……気のせいだったみたいだ?」
「(あっ危なかった!)」
*
着ぐるみショーの会場からファミレスまで、そう遠くはなかった。店の中に入るとお昼の時間に近かったこともあり盛況だった。
「日ノ出さん、2名でお越しの日ノ出さんはいらっしゃいますか?」
委員長と話をしながら待っていると、名前を呼ばれた。
「はい、日ノ出です」
「では、お席までご案内いたしますね」
俺と委員長は店員さんに案内してもらうと、案内してもらった席に座った。
「なに、食べようかな」
「ま、迷っちゃうよね」
2人でメニュー表を除きこみながら、何を注文しようか決めていく。
「俺はハンバーグセットにパフェかな」
「じゃあ、私はナポリタンにしようかな。あと、プリン」
「委員長、プリン好きなんだな」
「うん、好きだよ。日ノ出くんは、パフェ好きなの?」
「パフェが好きというか、甘いもの全般が好きなんだ」
「へぇー、そうなんだね」
委員長と話をしながらボタンを押し、店員さんに注文した。
頼んだものが届くまで、俺たちはさっきのキラ☆ルリのショーについて話をした。
「あの、脚本よかったよな!」
「だ、だよね、私最後感動しちゃったよ!」
「わかる!」
ショーを観ることはできなかったけど、俺は敵役としてショーを楽しんでいた。まじで、脚本がよかった!
「俺、敵役やりながら、最後泣きそうになったよ」
「ふふ、よく頑張ったね。えらい、えらい」
「……」
「どうかした?」
「なんか、委員長に褒められるっていいな。今の言葉もう1回言ってくれない?」
「え、えぇ、は、はずかしいよ」
「たのむ!」
俺が手を合わせてお願いをすると、委員長は顔を赤ながらいった。目は潤んでいた。
「よ、よく頑張ったね。え、えらい、えらい」
「おぉ、いいなそれ」
「うぅ、すごく恥ずかしいよぅ」
委員長は顔を手で隠しているけど、その姿はすごくかわいかった。
「ありがとう、委員長。すごくかわいかったよ!」
「かっかわ!?」
「あっ俺、ジュースとってくるね」
「うぅ」
ジュースを入れて戻ってくると、なぜか委員長が涙目で睨んできた。
「? どうかした」
「べ、べつに」
「?」
その後も委員長とはキラ☆ルリや学校のことを話したりした。すごく楽しくて、気がつけばあっという間に夕方になっていた。
2人で電車に揺られながら、家の近くにある駅で降りた。委員長を家まで送ろうと思ったけど、委員長の家族が駅まで車で迎えに来たらしい。
「きょ、今日はありがとうね日ノ出くん」
「あぁ、こちらこそ、ありがとう。すごく、楽しかったよ」
「わ、私もすごく楽しかったよ!」
「じゃっ、俺帰るな。また、学校でな」
委員長に手を振り帰ろうとした時、袖が誰かに引かれた。
「あ、あの」
振り向くと、手を引いたのは委員長だった。
「委員長、どうかしたのか?」
「その、も、もし良ければなんだけど……また、こうやって2人ででかけたいなって」
「委員長」
「す、すごく楽しかったから、やっぱりダメだよね?」
シュンと落ち込む委員長。俺は委員長の頭を撫でたい。委員長は、驚いたように顔を上げる。
「ひっ日ノ出くん!。」
「また、一緒に遊ぼう!」
「う、うん! ありがと日ノ出くん」
その顔はとっても嬉しそうで、こっちまで嬉しくなってしまう。
「またな、委員長!」
「うん、バイバイ。また明日」
手を振り合いながら、俺たちは別れた。
「さてと、家に……」
「待って」
「え?」
帰りますかと言いかけた時、殺気を感じた。身体中が震え、今にも逃げ出したくなった。
恐る恐る振り返ると、そこにはサングラスをかけたいすずがたっていた。(声でいすずだと判断した)
「お、に、い、ちゃんおかえりなさい」
「いすず、どうしてここに!? ってかお前、俺の服を」
「ずいぶん委員長と楽しそうだったね? デート楽しかった?」
いすずの後ろからどす黒いオーラがたっている。
そういえばいすず、誤解したままだったんだっけ。
「いすず、違くてだな! 委員長とはたまたま会っただけで」
「だとしても、楽しそうだったじゃない? 傍からみたらデートそのものだったけど?」
「ただ一緒に遊んでいただけだって! ってか、なんでお前委員長と遊んでいたことを知ってるんだ?」
「そ、それはその」
さっきの態度とは一変して、しどろもどろになるいすず。
「まさか、つけていたのか?」
「……」
「どうなんだ、いすず?」
「うぅ」
いすずは観念したのか洗いざらい話してくれた。どうやら俺がデートをすると誤解をして、つけていたらしい。
「(それで朝、服を隠したりしたのか)」
そこまで考えて、ふと思った。
「なぁ、いすず。どうして誤解していたとはいえ、俺のデートを邪魔しようと思ったんだ?」
「それは、その」
なぜか顔が赤くなるいすず。
もしかして……
「いすずお前……」
「っ〜〜」
「いつのまにか、お兄ちゃんっ子になったんだな!」
「は?」
「だから、デートの邪魔をしようとしたんだろう? たくっかわいいやつめ」
「は?」
頭をわしゃわしゃと撫でてやる。が、いすずは反応しない。それどころかさっきよりも殺気が出ていて……
「お兄ちゃんのバカ!」
「いてっ!」
なぜか、思いっきりスネを蹴られた。
なんで??
*
「はっお兄ちゃんにどうして演技が上手いのか、聞き忘れてた!?」
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