第16話 ホットケーキパーティ!

なんとか体育祭も終わり、ようやく走ることから解放された。

 これで俺は自由だ!! っと叫びたい気分だった。


 面倒ごとから、解放されたしな。


 そうそう解放されたといえばもう一つ。なぜか体育祭が終わった後、なぜか沢田くんから謝罪をされた。


「じ、実は青っちのことが好きで。幼馴染の日ノ出に嫉妬しちゃって……だから、嫌がらせをしちゃったんだ。ごめんなさい!」


 終始ずっと青い顔をしていて、謝られているけどこっちが心配してしまうレベルだった。


 ちなみにその後、なぜか先生たちが俺への嫌がらせの件を知っていて、沢田くんたちは停学処分になった。


 「誰かいったのかな?」


 まぁ、これでめんどくさい種が無くなったからいいけどさ。


 こうして、めんどくさい二つの件は無事終了した。


 今の気分は、最高そのものだった。


「はぁー、今めちゃくちゃ最高の気分!」


 俺はいちごオレ片手に、自分の部屋でくつろぐ。今日は一日フリーだし、キラ☆ルリでも見ちゃおっかな♪


 なんて思いながらスマホの画面をタップした瞬間、プルルルっとスマホが鳴った。

 どうやら誰かが電話をかけてきたみたいだ。


 よく見ると画面には、青と書かれていた。

 電話に出ると、「もしもし?」っと青の元気な声が聞こえてきた。


「弘人、おっはよ! 今暇?」

「ただいま日ノ出弘人は、今忙し……」

「暇なんだな。じゃっ10分後に弘人の家に行くから!」


 それだけいうと青は、すぐ電話を切った。


 こいつ、俺の話聞いてないし!?

 

 はぁーっと呆れつつも、青らしい電話だと思った。いつもうちに唐突に来るからな。


 一体、何しに来るのだろう?


「仕方ない、キラ☆ルリはまた今度にして。支度しますか」


 服を着替えて、リビングに向かう。


 ピンポン。


「弘人ー、来たよ!」

「はーい」


 10分ちょうどに来た。

 扉を開けると、そこに青がいた。

 黒いキャップの帽子をかぶり、青い大きめのパーカーを着て、下にはショートパンツを履いていた。


 足がスラッと長く、目についてしまう。


「何、人の足をジロジロみてるんだよ……」

「不可抗力だ」

「まったく」


 呆れたように、青ははぁーっとため息を吐いた。


「弘人は、足フェチだからな」

「いや、違うって!」

「よく、あたしの足とか見てるし」

「んなわけ!」

「まぁ、いいや。これ持って」


 青から渡されたビニール袋を受け取る。中には卵や牛乳やらが入っていた。


 ?どういうこと?


「なんだよ、これ? ってか今日何しに来たんだよ」

「それについては、家の中で話すから。それより飲み物ちょうだい。喉乾いちゃってさー」

「わかったよ」


 とりあえず台所でコップに麦茶を注ぎ、青に渡す。青は美味しそうに麦茶を飲み干した。


「ぷはー、生き返る!」

「で、何しに来たんだよ。お前」

「速攻聞いてくるなー」

「速攻聞くに決まってんだろ。気になるんだもん」

「わかったよ、今日来た理由を教えるよ」


 青は俺に渡した袋から何かを取り出した。


「じゃじゃーん! 今日は弘人たちとホットケーキ焼こうと思ってきたんだ!」

「青、天才か!」

「でしょ? 弘人が好きだと思ってさ!」


 俺は大の甘党だ。ホットケーキとか好物でしかない。


「3人でホットケーキ焼いて、体育祭お疲れ様会しよう。ところで、いすずちゃんは?」

「いすず、まだ帰ってきてないんだよ」

「そうなの? 昨日連絡した時はこの時間帯家に居るっていってたけどなー」

「俺にも事前に連絡して!?」

「よーし、先にホットケーキの粉を混ぜたりして、待ってるか」

「話聞いてる!?」


 ということで、先にホットケーキの準備をして待つことになった。


「じゃあ、初めますか」

「だな」


 キッチンに行くと、俺はささっとホットケーキミックスをたまごと牛乳で混ぜ合わせた。


「生クリームも作っちゃうね」

「あぁ、頼んだ」


 青はホットケーキのトッピング担当。生クリームやカスタードクリームを作ってく。


「あっという間に、準備整ったな」

「だね、あっという間だったね」


 それぞれ料理を分担しているので、めちゃくちゃ楽だった。

 

「よし、こんなもんかな。弘人、クリームの味見してくれないか」

「いいぞ」

「はい、あーん」


 青がスプーンでクリームをすくうと、俺の口に向かってさしだした。


 俺は躊躇いもなく口に入れる。ちょうどいい甘さだった。


「ん! めっちゃうまい、さすがだな青!」

「へへん、弘人の好みは把握してるからな! こんなの朝飯前だ……あっ弘人」

「うん?」


 不意に青が俺の口元に人差し指を伸ばしてきた。どうしたんだろうと思ったら、青の指先にはクリームがついていた。


「ごめん、ミスってクリームつけちゃってた」

「おっとってくれたのか、サンキュー」

「いえいえ」


 パクッと躊躇(ためら)いもなく、青がクリームを舐める。

 俺はそれを見て、特別気にしなかった。


 ガサッ


 のだが、


「ん? あれ、いすずじゃん。おかえり」

「いすずちゃん、おかえりなさい!」


 音のした方を見るとそこにはいすずがいて、何故かニコニコ笑ってる。(口がめっちゃひきつってる)


「どうしたんだよ、いすず。そんな顔して」

「か」

「は?」

「よくそんなマンガにありそうなシチュエーションを平然とできますね!?」

「マンガにありそうなシチュエーション?」

「あーんとか、生クリームをペロってなめたり……恋愛マンガにありそうなシチュエーションばかりじゃないですか!」

「い、いすず落ち着い」

「しかも、2人とも照れないで平然とやってるし! 長年寄り添った夫婦ですか!?」


 まぁ、たしかに。


「俺たちって家族以上みたいなもんだからなー」

「だねー」


 青と顔を合わせて頷いてると、いすずはムッと頬を膨らませた。


「?どうしたんだ、いすず?」

「(むー家族以上とか、羨ましいな。けど、この間私があーんした時にはお兄ちゃん照れてたし……異性として見てくれてるってことだよね!)」

「い、いすずさん?」

「(なら、たくさんお兄ちゃんを照れさせて、異性として意識させないとね!)ううん、何でもないよ。今日、ホットケーキパーティやるんだよね? 楽しみだなー、あっ私着替えてくるね!」

「おっおう?」


 なぜかいすずはムッとしていたのに、今では機嫌良さそうな顔をしていた。よく分からないのだが。


「不機嫌になったかと思えば、機嫌良くなったり……よく分からないな」

「まぁ、女の子にはいろいろあるんだよ」

「そういうもんか?」

「そういうもん。ほら、ホットプレートだしたり支度するよ」


 青にそういわれて、俺は台所の奥からホットプレートをとってきた。


 青はテーブルにトッピングを並べてく。


「こんなもんかな」

「そうだな。あとはいすずちゃんが来るのを待つだけだ!」


 しかし、いすずはなかなか降りてこなかった。

 

 どうしたんだ?


 不思議に思っていると、足音が聞こえてきた。どうやら、来たみたいだ。


「いすず、準備できた……えっ」

「い、いすずちゃん!?」

「2人ともどうしたんですか?」


 現れたのはいすずなのだが、服装が違っていた。胸元がガバッと開いた服に、やたらと短いスカート。背中はガバッと開いている。


 俺は慌てて目を逸らした。


「どうしたんですか、お兄ちゃん? 目を逸らして」

「お、お前何考えてるんだよ!」

「べっつに」


 ニヤニヤといすずが笑っているのがわかる。青が居るのに、俺をからかってくるなんてなんてやつだ!


「お兄ちゃん今日は、見てこないですね?」

「えっ」

「いつもは、胸ばっかりみるのに」

「いっ!?」

「ひ、ひひ弘人! 妹の胸ばっかり見てるのか!?」

「いや、違くて!」

「あたしだと、足ばっかり見てくるのに! どんだけフェチが多いんだよ!!」

「……えっお兄ちゃん、青ちゃんの足見てるんですか?」

「何この展開! ただ、目に入っただけで!」

「お兄ちゃん/弘人!」


 なぜかそのあと、2人にこってりと絞られたのだった。

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