表では清純派アイドル、俺の前では生意気な義妹に×××する話

天春 丸。

第一部 義妹がアイドル!?

はじめまして、お兄ちゃん!

「はじめまして、星夜いすず(ほしや いすず)っていいます」


 ニコッと輝かしい笑顔を浮べる、目の前の女の子。


 俺はその子の顔を見て、驚いてしまった。

 なんで、どうして、と感情がごちゃ混ぜになる。


「ほしや、いすず?」

「はい、星夜いすずです」


 目の前の彼女は艶やかな黒くて長い髪をストレートに伸ばし、大きな黒い瞳をパッチリとさせた。

 肌は雪のように白く、体はスラッと細い。

 カジュアルな白色のワンピースを着こなし、キレイに磨かれた爪をこちらに伸ばして……誰もが見惚れてしまう容姿をしていた。


「よろしくお願いします、お兄ちゃん♪」

 

 伸ばされた手に俺はぎこちなく答えるように手を伸ばし、握手をかわした。


「ふふ、お兄ちゃん緊張されてますね」


 余裕ある笑みを浮かべながら、彼女は手をゆっくり離した。


 彼女の雪色の肌はどこか赤い。


 「(室内の暑さのせいだろうか?)」


 ボーっと彼女の顔を見つめていると、彼女はどこか夢見心地な顔でいった。


「実は私、アイドルをしているんです」

「あ、あぁ」


 彼女は口元の横に手を当てると、内緒話をするように小さな声で話した。


「早く私のことを好きになってくださいね、


 その顔はなぜかキラキラと輝いていて、その顔に俺は見惚れていた。


 なぜだか、彼女から目が離せなかったのだ。


 俺はこの日、"星夜いすず"と兄妹になった。


 今をときめかせる清純派アイドルの、星夜いすずとだ。


 これからの日々は、素晴らしい日々になっていくって


「お兄ちゃん!」

「……」


 ……そう思いたかった。


 それが、半年前の話だ。


「お、兄ちゃん!!」

「……」


 あれから俺は、家族としていすずと暮らしている。


「お兄ちゃん、いたいた」

「……なんだよ?」

「ふふ、私。お兄ちゃんを探してたの。だって……」


 いすずは背伸びをして、俺の顔にゆっくりと自分の顔を近づけてくる。いすずの顔は真剣そのものだった。


 これってあれだよな? まさかキスしてくるのか?


「?」

「……ぷ、くすくす」

「あ?」


 するといすずは、なぜか腹を抱えて笑い出した。


「お兄ちゃん、キスされると思ったでしょ! 残念だったね! お兄ちゃんにキスするわけないじゃん!」


 その顔を見て、からかわれたのだと悟る。


「……」

「ん? どうしたの? お兄ちゃん、図星? 泣いちゃったー? 私が慰めてあげようか?」


 星夜いすず、今をときめかせる清純派アイドル。


「本気にしちゃった? ごめんね、お兄ちゃん♡」


 しかし俺の前ではただの生意気な妹に成り果ててしまったのだ!!


 これは猫かぶりアイドルの義妹と俺とのドタバタな日々の話だったりする。

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