幼妻は甘やかしたい
天風 繋
第1話 side 誠人
トントンっと軽快なリズムが響いていた。
キッチンで、料理を作る音。
俺は、眠気眼を擦り寝室を出た。
キッチンでは、セーラー服を着た少女がいた。
セーラー服は、白を基調としていたスカートは紺色。
ピンク色のエプロンを上から纏っている。
髪は、黒髪で今は黄色いシュシュで結んでいる。
長さとしては、腰くらいまでの長さがある。
そして、彼女の足元には踏み台が置かれている。
「
彼女は、作業を止めて包丁をまな板に下ろしてこちらを振り返る。
踏み台があって、俺と同じ顔の位置に顔がある。
幼さが残る顔立ち。
深い茶色の目。
見た目からすると中学生に間違われるほどだが歴とした高校3年生だ。
「
俺は、紗愛の髪を撫でる。
柔らかく艶やかな手触りが心地いい。
「もぅ!誠人さん」
そう言うと、彼女の顔が俺に近づく。
俺の唇に、紗愛の唇が触れる。
小さくて柔らかい。
そして、紗愛の顔が離れていく。
「おはようのキスが先・・・ですよ」
そういって、紗愛が微笑んだ。
俺は、この笑顔が昔から好きだった。
いつから、彼女を妹ではなく異性として認識したのだろう。
妹と言っても、妹同然だ。
実家が、近所で彼女の両親が共働きだったこともあり、よく俺と遊んでいた。
彼女が中学生になった頃か、あの時異性として見るようになったような気がする。今から5年ほど前か。
「まだ、朝から紗愛がいるのに慣れてなくてな」
「もぅ!早く慣れてよ・・・誠人さんからしてくれるの待ってるのに」
「もう、可愛いな。紗愛は」
俺は、紗愛を抱きしめた。
彼女の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「えへへ、誠人さんからしてもらうの好き。
でも、ご飯作らなきゃ」
俺は、紗愛を離す。
彼女は、料理を再開した。
トントンと軽快なリズムが鳴り始める。
「誠人さん、着替え済ませて来てね。
ワイシャツとネクタイは用意して出してあるよ」
「ありがとう、紗愛。大好きだよ、愛してる」
さっきまで軽快だった音が乱れる。
「もぅ」と小さな声が聞こえた。
俺は、ウォークインクローゼットに向かう。
そこには、小さなメモが付けれたワイシャツとネクタイが置かれていた。
『今日はクマさんにしました』と書かれていた。
ネクタイは、紺色の基調でグレーのデフォルトクマがプリントされていた。
俺は、着替えをする。
紗愛と暮らすようになったのは、一昨日からだ。
俺は、左手に目を向ける。
薬指に、シンプルなデザインの指輪が嵌っている。
一昨日・・・6月3日、紗愛の誕生日に俺たちは結婚した。
交際期間は、告白してからだと3年くらいだろうか。
生まれた頃から知っているし、子守りもしたことがあるんだけど。
昨日から、紗愛の様子がおかしい。
なぜか、俺を甘やかそうとしてくる。
別に嫌いではないが恥ずかしいから困る。
俺としては、甘やかしたいのになぁ。
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