妹。

八五三(はちごさん)

登場、だぞ! シスコンども!!

 宇宙人を追いかけて来た場所は――ズバリ、“ヨクス”。幻談げんたん都市としの自由経済区で、危険レヴェルⅢ。

 の、

 廃墟地区。


 それも半端ないビルディングの墓場。


 表世界と裏世界も経済景気がいい時には、ここではいろいろな企業が非合法な取引から研究をしていた。

 の、だが。

 誰の言葉だったからしら。

 “景気は生き物”――生まれて、死ぬまでが、一つ。

 まさに好景気に生まれ、不景気になって死んだ。

 ――下級国民たち、が。上級国民共は、ネズミよりも危険能力が高く。さっさと、非合法な物や研究資料を運び出し、新しい居住地域へと移住していった。

 そして、この光景が残った。

 動かせないモノ。表世界でも最悪の負債と呼ばれる――箱物を。遊び心のある幻談都市を、しても、例外にはならなかった。

 

 都市は都市。




 とりあえず建造物としての体裁は出来るだけ保っている。が、壁が剥がれ落ちて内部が剥き出しになっている。

 玄関ドアから侵入しなくても、ぽっかりと空いている箇所から容易に入ることができる。

 こんな放置され放棄された建造にも、所有者が居る。 

 世捨て人である。

 でも、

 ここでは表裏ひょうり世界の世捨て人とは、明らかに異なることが判るモノたちの居住地域として、再開発されている。




 人らしいシルエットが見え隠れしている。

 それなりに高いビル群が並ぶなか、一際、月明かりに照らされて地面に映し出す影の高さは二十階建て。

 に、

 イメージとして飛ぶイコールジャンプではなく、飛翔していく――比喩でなく。


 男が屋上ヘリポートに降り立った。

 一瞬だけなら男性にしか見えないだろう。が、ヒトガタの生命体であった。

 上空に向けて視線に殺気を孕ませ、睨む。

 頭から腹にかけてカラスのように黒い。が、腹は白く。尾は濃い青から青緑への美しいグラデーション。

 を、した。

 四メートル近い、怪鳥が旋回しながら降下してくる。


「ビルの屋上に翔んで行っちゃったから。慌て、ちゃった、よ。もう、」

「…………、…………」


 降りてくるときに羽ばたきの音がしない、怪鳥の背中から。ぴょん! と、屋上に着地したのは。

 ――美少女。

 街を歩けば魅力から、男たちは必ず振り返る。

 年齢よりも幼い顔立ちながら、同年代の少女よりもプロポーションが良く。腰まで伸びた黒絹の長い髪が歩くと、綺麗というよりも凛々しくなびく姿は勝手に目が追ってしまう。

 そんな特徴よりも、美少女が男たちへ魅惑を一層強めさせていたのは――左目の泣きぼくろ。


「アレが噂の反重力装置アンチグラビティ

「…………、…………」

「黙っていても。わたしには、アナタがどこに居るか判っちゃうんだから、ね」


 ヒトガタの生命体は、驚きから下から上にまぶたを閉じた。


「俺の姿が視えているのか?」

「そう。わたしに光の屈折率を利用した迷彩は、通じないのぉーよぉー。赤外線感知ピット器官があるから。目を覆われても、獲物は捉えて逃さいん、だぞ!」

「あろうことか。夜の牝馬ナイト・メア眠ったままの脳ナイト・ヘッド女、宇宙海賊ブラック・スワン渡り鳥スワン。以外に追い詰められるとは」

「あら。その幻談げんたん都市としの人事異動情報は、古い古い。常に最新版にアップデートしておくこと。が、この都市で長生きできる。ひ・け・つ、よ」

「最後に名を訊かせてもらっても? お嬢さん」

七つの呪いアンラッキー・セブンこと――みさき七人ななひと死神の右腕デス・サイズ――岬、神威しんいの妹ちゃんです!」

「まさに。不運アンラッキー、だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妹。 八五三(はちごさん) @futatsume358

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ