第廿陸話 この公女、堕ちたな
はは、人生は地獄だの何だのとほざいてきたが、やっぱりバグだらけじゃねーか!
日常なんて、平穏な日常なんてもう訪れはしない。
今日は、こうなんかあるのだ。
そう、来るべき日というか何というか。
血だ。血が出てくるのだ。
何それ、見たいな?ブッコロ……失礼、殺しますよ。あっ、結局殺しちゃった。
さて、殺したやつ(心の中のそいつ)はほっといて、さっさと目の前の事件……惨事について語るとしよう。
龍公国から、皇女殿下がお目見えになられた。親日的な国の一つとして知られており、本当に龍を祀っている国である。
ウェールズの赤い龍などの空想として語られているものは、全て本当にあったことだ。それを知ったのはつい最近だったが。
講義を受けた時に、それが判明して感銘を受けているところなんだが、本当に実物が来るとなると話は別だ。
本当に来るとは流石に思わんだろう?
ってか、誰がそんなこと察知できるというんだ。
全くもってけしからん!そしてめちゃくちゃ可愛いんだが、保護してもいいですか?保護活動しちゃいますか?どうなんですか!
めちゃくちゃに自分の中の保護欲っていうか庇護欲っていうかが刺激されて、大変なことになっているとは言っておこう。
それだのに、護衛がいるとなると流石に厳しいか。
……いっそこれを庇護し保護し、護衛の座を……なんか俺官位持ちだから、国外に追放されなくとも、国内で囲われるんじゃないの?
そして国内で囲われて鎖で縛られるんじゃないの?
即刻打首じゃないだけでマシか。
そう、プラスに考えて……プラスに考えて仕舞えばいい!
そう、俺は無敵の人!向かう所敵なし!なんて言ってるんだけど、それが揺るぎそうになるのは気のせい。
「貴方が一番合戦の名を継いだ者ですか……あの者は強者でした。素晴らしい戦績を収めたとか。貴方もお強いんですか?」
「おいおい、不躾すぎる質問だな。まぁ、俺も気になるけどよぉ。だからと言って、戦いなんか挑んじゃいけねぇぜ?」
最もすぎる忠言だな。
俺もこの皇女とは戦いたくない。庇護欲的な意味で。
何だろう……これが母性というものかぁ。
女ってこういう機能備わってんのなぁ。
驚きだぁ。
しかしながら、戦いに興味がないわけでもない。この学園にこの人と恐れられているこの私だぞぅ!多分、恐れられてるってことにしとこう。
いやはや、人生何があるかわからないもんで、何でもよく見てしまうな!この凶暴すぎる胸部武装は、目を引くものがあるぅ。
これは現代の暴力と言っても差し支えないのでは?
現代人の
「ですから、演習というような名目で貴女と一戦交えてみたいと思うのは不躾でしょうか?」
ふむ、確かに演習という名目であるのならばその行為は殊更"唯の力を推しはかる為のモノ"として処理されることになるだろうな。
そうであるのならば、簡単に済む手続きをして演習場の使用許可を持っていけば問題あるまい?
そんなこんなで演習場に移動してきました、私様です!
さてさて、先に血を見たいやつはどっちなーんだい!俺はどっちでも構わんぜぇ?(ゲス顔)
「貴方は、自分が強いとお思いですか?私は……思っています。最初は私からでよろしいですか?」
先手は譲ろう。
なので、首をこくんと縦に動かし首肯する。
本当は、別に力を押し計りたいわけでもなければ、普通にあんたらとやり合うのは些か面倒であると言うことは間違いないが。
まぁでも?
龍公国のお姫様であるのならば?
普通に強いだろうと思うのは、俺の勝手な想像力の賜物って感じぃ?
さてさて、ぶっ飛ばして行きますか。
相手の攻撃を待ってからだけどなぁ!
「私の能力は、血統因子によるものです。他の方にはあまり見られない能力であると言うことは間違い無いでしょう。しかしながら、それでも絶望しないでください。私の前で絶望したら、ほぼ間違いなく命は助からないものと思ってください」
そこまでの啖呵を切ったからには、とんでもなく強いんでしょうねぇ?
やっぱりぃ?龍公国の公女であるからにはぁ?その自信も頷けると言うものですよねぇ?
まぁ、どんな攻撃が飛んでこようとも、避けれる自信はあるんですがぁ、とりあえず見てから動くことにしましょうかねぇ……?
余裕をぶっこいていると、不可視の一撃のようなものが俺の方に飛んでくる。
なんだと?こうなると話は違ってくる。
確かに、このお姫様。口に出すほどには強い!
………………ッ!?もう一回飛んできた!
なんなんだ、こいつの能力は?
全然庇護欲が湧かない存在なんですけどぉ!ちょっと、スタッフー?!(古い)聞いてた話と違うんだけどぉ!
思わずラーメンから始まるクソウマギャグを口走ってしまうところだったぜぇ。
「この攻撃を見切るとは、流石は一番合戦の名を継ぐものですね。攻撃は避けられないものと思っておりました。素直に謝罪致します」
「……………………………………大した事……………………ない」
「ほぉ、お嬢の攻撃を避けるとは、お嬢ちゃんやるねぇ?普通は避けられないはずなんだかなぁ」
あぶねあぶねあぶねぇ!!!!
視覚を《強化》してなかったら危なかった!
まじで多分この公女の異能は《神速》なんじゃねぇの?!
最悪な展開になってきたと思うんだが、こんなの自分の視覚だけを超強化してるだけじゃ足らねぇ!
お口からなんかとんでもない言葉出てますが、全然大した事ありますぅ!!
現に死にそうでしたぁ!!なぁにあいつぅ!?
とんでもセンスやんけぇ!!!
「今度はもっと早くなります。様子見などと失礼な真似をしてしまい申し訳ありませんでした」
あ、あれ最高速じゃないの?うそやん、わてかてそんなに早い物体を追えるほどいい目してねぇんすわ。
はぁ、こうなったら当たるとか当たらないとかなしに考えようや。
そうしたら何も考えないでいい。【全強化】を行うわ。
こうなったら誰にも止められん。
…………心してかかれよ、龍公国のお姫様?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それは、私が様子見をやめますと言った着後から、目の前にいる存在の雰囲気が一気に変わりました。
ありえない事です。本当に目の前の
「…………………………………………吹っ飛べ」
左の手から繰り出されるパンチには、白い閃光を纏って、《神速》で動いている私の右頬をかすめ流血しました。
ダメージトレードでは五分と言った状況が、あちらのパンチで一気に均衡が崩れてしまいました……!
負けじと《神速》で音の刃を作り出しますが、ものの見事に自身の腕の関節を《強化》しミキサーのように吹き飛ばしてしまうではありませんか!
これは……今まで戦ってきた中での1番の強敵。
こんな方がこの島国にいるなんて、驚きを超えて呆れすら生まれてきてしまいますね。
「しかし、こう言った膠着状態が続くと、そちらとしても、あまり宜しくはないのではなくって?」
コクリ、と動かない表情筋と口は、こちらに何かを伝えようとする意思は感じられますが、こんな先頭の中汲み取ることなどできません。
「じゃ…………………………次、で………………最後」
大技を躊躇いもなく見せていただけると言うのですか!?
それはなんとも……僥倖っ!
「ええ、こちらで最後に致しましょう!」
私が
何もかもが規格外で、化け物なのだ。
そんな化け物に勝つには、自分も化け物になるしかありませんわよねぇ?
「これが龍公国にまつわる伝説の《龍化》!!とくとご覧あれ!…………灼熱と氷河の
…………っ!まずい!あのいちはがくえんがあるところ!そんなところにこのブレスが当たってしまったら、取り返しのつかない外交問題に発展してしまいますわ!
ふと目を見やると、そこには銀の髪を靡かせる女性が一人。
目の前に立ち塞がるように陣取り、拳と腰の位置を低く一定にします。
一体…………何をしようと言うの?
「……………………
力強い拳で、その全てを飲み込まんとしているブレスが弾け飛びさった…………なんで?
え?
え?
え?
ほへ?
彼女は手首を数回鳴らしたあと、戦いはここで終わりだと言わんばかりに自室へ戻って行く。
ああ、私はとんでもないものに喧嘩を売ってしまったのと同時に、最高の気分になる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん♡華恋様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ♡」
こうして、
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