君達にはゆるくイチャイチャしながらサバイバルをしてもらう!!
荒瀬竜巻
プロローグ
第1話 覚醒確認
なんというのだろう。信じられないぐらい身体が重かった。昨日……? ああそうだ、昨日だ。超豪華クルーズなんて一生に今しか乗れないと思って、ついつい大はしゃぎしてしまったんだっけ。しかも1日では回りきれないぐらい広くてアイツらと右往左往しまくった。だからこそ、こんな寝過ごした感満載の起き心地になっているんだ。今は何時だ。
スマホは……圏外だ。まあ船だし、当然なのか? とにかくいくら繋がっていないとはいえ時間を調べるのに不自由はしない。今はもう、午後の2時だ。寝過ごしている、完璧に寝過ごした。爆速でパジャマから着替える。無機質な1人用の寝室からリビングルームへ向かった。ここは本当にすごくて客室にまでリビングがあり、そこから寝室に行けるようになっている。まるでキッチンと風呂のない家のようだ。
寝ぼけた頭を誤魔化しつつ、その広いリビングを見渡した。まだ誰も起きていない。なんだよかった、全員寝過ごしていたんだな。そういえばみんなどこで寝ていたっけ……。俺を含めて確か6人が個室だった気がする。と言うことは2人はリビングにいるはず……その時、ふっと目に入ったソファーベッド。そこには俺の親友、伊藤桐郎(いとうきりお)が横たわっていた。どうやらまだ眠っているようだ。……寝過ごしておいてなんだが、流石に起きてなきゃダメな時間だろう。俺は桐郎を起こしにかかることにした。
「起きろよ桐郎、もう昼だぜ。せっかくのクルーズ船と旅が勿体ねえよ」
爆睡中な桐郎の顔は安らかそのもので、とても気持ちよさげである。そんな顔を見ると起こす気も失せてしまいそうになるが、今だけは別だ。他の奴らもこんな感じかと思うと1人に長い時間はかけられない。せめて昼食は食べるぞと思いっきり揺すってやった。桐郎はすぐに目を覚ましたようでゆっくりと体を起こす。それから眠そうな顔をして辺りをキョロキョロと見回していた。
「おはよう、桐郎。よく眠れたか?」
「うん……ぐっすりだよ。疲れてたのかな? いつもより眠りが深かったみたい。圭吾くんはいつ起きたの?」
「ついさっきだ。まさかお前まで寝過ごすとは思わなかったけどな」
もうお昼過ぎだと言うと流石に目が覚めたようだ。急がなきゃとバックから普段着をとっている。
「ほら、着替えたらみんな起こして飯食いに行くぞ!」
「そうだね! じゃあ早速……」
そう言って桐郎は勢い良く立ち上がったものの、そのままフラリと倒れそうになった。慌てて支えると、どうやら立ち眩みを起こしただけらしい。ただでさえ細い体がますます華奢に見える。大丈夫かと声をかけた。すると桐郎は平気だよと微笑んでくれる。
しかしすぐにハッとした表情になり、少し焦った様子で俺の胸から離れて行った。
―――
「圭吾くん、ぼくの体調のことなら気にしないで。その、トイレで着替えてくるから、その間にみんなを起こして。すぐ着替えるから!」
そういうとそそくさとその場を離れていく。桐郎は昔から俺より体力がないんだし、疲れているのなら無理はしない方がいいんじゃないかと思ったが、本人がいいと言っているんだしあまり口出しするのは野暮だろう。さて、他の寝坊助供を起こしに行かなければ。先ずは……隣のソファーベットに寝ている、一応俺の先輩工藤永作(くどうえいさく)にしよう。永作さんは通信制の高校に通っている。常日頃から昼夜逆転のレベルを軽く凌駕していて、大抵朝8時に就寝、そして夕方近くまで寝ているので、朝とか昼には弱いんだろう。
「永作さん、永作さん、起きてください。もうお昼ですよ」
「……う~ん、もう食べられへん」
「何か食べるならせめて現実のお昼ご飯にしてください!」
強くゆするとようやく瞳が開いていく。それでも桐郎以上に身体が重いようで、掛け布団を持ち上げるだけでも一苦労といった感じ。……この1週間のクルーズ旅行で少しでも永作さんの生活習慣が改善されることを願うばかりだ。
「……ああ、千葉クン。おはようございますぅ……あぁー、眠いわぁ」
「はい、おはようございます」
永作さんはまだ眠そうである。着替えるのはもう少し目が覚めてからにしてもらおう。大人しいが真面目な桐郎が幼馴染なせいか、正反対のこの人はどうにもマイペースすぎる気がする。しかも天然ボケなので、時折とんでもない方向に話を持っていくのだ。だから『一応先輩』、俺がちゃんとしなくちゃいけない。
「永作さん、とりあえず服は後回しで構いませんので、まず洗面台で寝癖をなんとかしてください。俺はみんなの部屋に起こしに行きます。 早くしないとお昼の時間に間に合わないかもしれないので」
「ああ、分かりましたぁ……ちょっと待ってて下さいねぇ」
「はい、お願いします」
のっそりとした動作でソファーベッドから抜け出すと、壁に手をつきながら歩き始めた。……大丈夫だろうか、不安になる。いざという時は桐郎もいると自分を納得させ、他の奴らがいる個室に向かうことにした。
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